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もめない介護

別居介護はスケジュール闘争 振り回されないコツは もめない介護42

ほこりを被ったFAXのイメージ
コスガ聡一 撮影

別居介護にはスケジュール調整がつきものです。たとえば、訪問介護(ヘルパー)や訪問看護などの介護サービスを新たに導入するとなると、契約手続きが必要。要介護状態に変化があれば、認定された期限内であっても、「区分変更の申請」を行い、再び認定調査を受けることもありえます。

また、必要に応じて医療・介護の関係者が一堂に会して、情報共有と今後の方針を検討する「ケアカンファレンス」も開催されます。

家族は必ずしもすべてに立ち会う必要はありません。ただ、都合がつけば立ち会ったほうがいい場面も少なくないのです。たとえば、認定調査では、ご高齢の方の多くが「まだまだ元気」「介護保険に頼らずとも大丈夫」なところを披露します。

普段は寝たり起きたりで、着替えもおっくうがっていた親が、調査員の前ではキビキビ動き、別人のようにしっかり対応しているのを見て仰天したという経験談は後を絶ちません。

家族が立ち会っていれば、実際の困りごとをそっと伝えることもできますが、ご本人たちしかいなければ、それが「普段の姿」と受け止められ、実際よりも軽い判定が出てしまうことも十分考えられるのです。

複数の人の予定を同時に調整しようとすると堂々巡りになることも

ただ、日々の仕事や生活に追われる中で、さらに介護の予定を組み込むのは容易ではありません。しかも、多くの場合、複数の人の予定を同時に調整しなくてはいけないので尚更です。

しかも、介護業界はまだまだアナログなところも多く、メインとなる連絡ツールは固定電話もしくはFAX。メールも送受信はできるものの、介護事業所の共通のアドレスを全員で使っているような状態で、かえって連絡が滞ることも珍しくありません。

実際、わたしも介護が始まったばかりのころ、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)さんと日程をすりあわせたけれど、結局、訪問介護事業所から都合が悪いと言われて仕切り直し。再調整した日程は、往診医の予定が合わずに、振り出しに戻る……といったことが延々続き、疲れ果ててしまったこともありました。

予定調整だけでこんなに消耗していたら先が思いやられる……。そう考え、作戦を変更!

まず、3日間ほど候補日を決め、「これらの日であれば、いつでも大丈夫」とケアマネさんに予定を預けます。日によっては午前中だけ動けたり、午後なら大丈夫ということもありました。ただ、時間を区切る場合もできるだけ「すべての日程で午後はOK」などシンプルにしました。これは記憶違いや認識違いによる日程再調整を防ぐためです。

いったん候補日を決めたら、そこから先の調整はケアマネさんにお任せします。「訪問介護事業所は何日なら大丈夫と言っています大丈夫でしょうか?」といった確認連絡を省略することで、お互いの負担を減らそうと考えたのです。

事後報告でも、当事者への伝え方には心配りを

このもくろみは大正解でした。というのも、こちらも向こうも常に電話に出られるわけではありません。留守電を聞いて折り返すと、今度は向こうが留守で折り返し電話をもらえるよう、伝言して……というやりとりがひたすら続くのは想像以上に疲れます。そのストレスを一気に減らすことができるようになったのです。

日程が決まったら、今度は認知症介護の当事者である義父母に、予定を確認します。すでに利用している介護サービスや医療機関の受診、往診などとバッティングしないよう、ケアマネさんと調整済みなので、義父母の予定も支障がないことは分かっています。でも、あえて「○日ぐらいに、おうちにうかがいたいと相談があったのですが、いいですか?」と聞くようにしていました。

都合も聞かずに、勝手に予定を決められたら、あまりいい気持ちはしません。その不快感が重なると、話を聞く気も失せるし、ひいては介護拒否にもつながりかねないだろうと考えてのことでした。

義父母の反応は日によってまちまちでしたが、8対2ぐらいの割合で、「その日は出かける用事があるかもしれない」「ちょっと今は予定がわからない」などの気乗りしない返事が返ってきたように思います。

別居介護ならではの、きょうだい間のすり合わせ問題

実際のところ、義父母はともに用事がある日・ない日を覚えるのが少しずつ難しくなっていたので、予定を聞かれてもよくわからないという側面もあったのかもしれません。ただ、「予定がわからないから来ないでほしい」とまでは言われることは稀で、たいていの場合は「また直前になって都合が悪くなるようなら、調整しましょう」と伝えると、すんなり了承してくれました。

この「ケアマネさんに一任&事後承諾」作戦に変えてから、介護関連のスケジュール調整は格段にラクになりました。ただし、例外もありました。それは義姉との日程調整です。

離れて暮らしながら、親の暮らしをサポートするなら、都合がつく限り、お互いの訪問時期をずらしたほうがいい。こうした話は何度か出ていて、義姉からも賛同する意思表示はありました。ところが、いざ予定の話になると、口をつぐんでしまうのです。そこには何か思惑があるのか、とくに他意はないのか、真意がわからず、ずいぶん戸惑いました。

さて、きょうだい間のスケジュールに対するスタンスの違いや温度差をどのように解消したか。それについては、次回ご紹介します!

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