勇気ある認知症当事者の発信 無理強いすることなく 歩調を合わせて
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
「一般の人に向けて、話してほしいの」
「いてくれるだけでいいの」
「当事者の意見が一番なのよ」
それらの相談は特に
若年性の認知症当事者の方に、
寄せられる。
「社会のためにもなるし、きっとあなたのためにもなる」
それは、みんなに当てはまることでしょうか?
困惑している当事者さんの顔は見えているでしょうか?
私たちは誰もが一生懸命。
だからここで、ひと息。
呼吸をあわせて。
東京都健康長寿医療センターの
2017年度~2019年度の調査において、
日本での若年性認知症者の総数は、
3.57万人と公表されています。
それだけの方がいらっしゃるのに、
私の身近な当事者の方々においても、
高齢の認知症当事者よりも明らかに
サポート体制が行き届いていないと感じます。
それでも昨今、
若年性認知症が世間に知れ渡り、
数々の支援先が生まれてきたのは、
当事者の方々が勇気をもって
今、そして未来のために語り、活動されてきたからです。
そして、その思いに
お仲間や支援者の方々が賛同し、
ご尽力された結果でしょう。
ただ、ご自身の症状を公表し、
顔を出し、発言することのリスクは
当事者の方にしかわかりません。
だからこそ、周囲の私たちが、
「あなたが顔を出し発言することが、社会のためになる」
と熱意を向けるのは慎重になるべきです。
悲しいかな、本人が望んでもいないのに
若年性認知症当事者の方や家族を、
公の場に、強引に連れ出そうとする人たちに、
今まで何度もお会いしました。
当事者も支援者も、
どなたもそれぞれの思いで一生懸命です。
だからつい「もっとよき方へ」と
生き急いでしまうのかもしれません。
多くの人の前で、話すことが得意な人、そうでない人。
人見知りする人、しない人。
何かにチャレンジするには、それぞれのタイミングもあります。
お互いの歩幅が合っていないことに
気づいているなら、
立ちどまればいいだけ。
呼吸をあわせて、共に進みたいものです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》