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要介護認定で調査員が訪問 面談時だけ元気になる親の対策 もめない介護131

駐輪場
コスガ聡一 撮影

介護保険サービスを利用するにあたって、必ずしなければいけないのが「要介護認定の申請」です。本人または家族が市区町村などに申請すると、認定調査員による訪問調査(認定調査)が実施されます。この訪問調査の結果と主治医意見書をふまえて、要介護(要支援)の度合いが決まります。

正しく要介護度を認定してもらうには、「普段どおりの生活」を見てもらうのが大切です。しかし、“なにも困っていない元気な私”を全力でアピールする親に驚愕し、ひざから崩れ落ちそうになったという子ども世代の嘆きは尽きません。「いつもはベッドでグッタリしている親が突然立ち上がって、着替え始めた」など、“アルプスの少女ハイジ”も真っ青のエピソードも、決して珍しくないのです。

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要介護度は重ければ重いほど良いわけではありません。ただ、実情と結果にズレが生じると、本来受けられるはずのサポートが受けられないことになります。判定結果に不満があれば、改めて認定調査を申し立てることもできます。でも、1回の認定調査で的確な判定をしてもらえるなら、そのほうがありがたいのは言うまでもありません。では、どうすればいいのか。

今回は「実情に合った要介護度を認定してもらうために、どのような準備をしたか」を紹介します。

(1)認定調査に立ち会えるよう予定調整

よく言われることですが、認定調査は事情が許す限り、立ち会うことをおすすめします。当日、認定調査員からの質問に受け答えをするのは親本人ですが、前述のようにプライドや思い込みによって「できる」を連発。実情と異なるトークを繰り広げることも多々あります。「プロならそれぐらい見抜いてほしい」ともつい思ってしまいますが、認定調査での義父母の振る舞いを見て、考えを改めました。

そこで発揮されていた“演技力”はかなりのものでした。緊張感と高揚感がなせる業なのか、いつもなら答えに詰まるような質問もサラッと回答。高齢だけれど、まだまだしっかりしていて上品な老夫婦を見事に演じ切っていました。認定調査に立ち会っていれば、「家族から見た実情」という形で補足情報を調査員さんに伝えることもできます。

気になるのが、認定調査の日程です。地域包括支援センターで「毎月1日から申請受け付けがスタートするので、1日に窓口に行くと希望が通りやすい」とアドバイスされ、そのとおりにしたところ、確かに希望どおりの日で設定してもらえました。ここは自治体によっても違いがあるのかもしれませんが、窓口で予約票のようなカレンダーを見せられ、「この日の午後にしてください」と伝えると、そのままサクッと決まりました。

日中は仕事があって動けるタイミングが限られているなどの事情がある場合はなおさら、月初めに申請しつつ、ダメ元で窓口に事情を相談してみるのも手かもしれません。

(2)あえての単独立ち会い

認定調査の立ち会いに人数制限はありません。ただ、我が家の場合はあえて、わたしひとりで立ち会うことにしました。当日は、義父母の生活について「普段どのように困っているか」を認定調査員の方につぶさに伝える必要があります。それは聞きようによっては“親の悪口”と聞こえてしまうかもしれません。子どもの立場からすると、「そうは言っても、できることはあります」「そこまでひどくはありません」とフォローしたくなるかもしれません。

また、義父母の様子を認定調査員さんに伝える際には、義父母が聞いてショックを受けないよう、配慮も必要だろうと思っていました。できれば、義父母に聞かれないように伝えたいけれど、そんなタイミングがうまくつくれるのかどうか。こうした不確定要素があるなかで、さらに夫や義姉といった、実の子どもたちの心情もおもんぱかって場を取り仕切るのは、初心者には難易度が高すぎる!

とにかく、義父母を傷つけることなく、日々の暮らしぶりと困りごとをもれなく伝えることだけをミッションにしたい。これが、単独立ち会いを選んだ理由です。

(3)「困りごとメモ」の作成

調査員さんに伝えたい「困りごと」は箇条書きでまとめました。さまざまな書籍やブログに「伝えたいことはあらかじめメモを用意しておいたほうがいい」とアドバイスが書かれていましたが、実際、あったほうが便利でした。

認定調査の当日、調査員さんの質問に直接答えるのは、義父母ですが、その答えは実情と合っていたり、合ってなかったり。聞きながら、「それは違う…!」というときは、調査員さんにさりげなくジェスチャーで知らせるなど大忙しで、落ち着いて話を聞いているどころではありません。

義父母の気がそれたスキを狙って、調査員さんに声をかけ、「家族から見た実情」を伝えて……とやろうとすると、てんやわんやで、話そうと思っていたことも頭からスコーンと抜けてしまう。あらかじめメモを用意してなかったら、伝えたいことの半分も伝えられなかったのではないかと思います。

準備万端かと思いきや、「頻度」と「時期」に言葉が詰まる

箇条書きメモは義父母それぞれに対して、A4用紙1枚分ずつ作成しました。「そんなにたくさん書くことがあるの?」と思われるかもしれませんが、これがあるんです! むしろ、1枚におさめるために割愛した情報もかなりありました。

全部は書ききれないので、たとえば、「ガスコンロの空焚き」「服薬管理に問題あり」「夜中の転倒」など、「命や健康に関わりそうなこと」を優先的にリストアップしました。

準備万端で臨んだつもりでしたが、認定調査の当日、困ったのが「頻度はどれぐらいですか?」「時期はいつごろですか?」という質問です。

一緒に住んでるわけじゃないから、わからない!!!

ぼうぜんとしていると、「何度も聞いてごめんなさいね。疑うわけではなくて、書類に記入しなくちゃいけない情報なので許してね」と調査員さんからフォロー。しどろもどろになりながら、なんとか分かる範囲で答えましたが、冷や汗全開でした。最初の認定調査を終えてからは、普段から「頻度」や「時期」にまつわるメモを残すよう意識するようになりました。

(4)義父母への説明は「役所の人が来ます」

認定調査があることについて義父母には「役所の人が来ます」とだけ伝えてありました。「要介護(要支援)認定」と聞いただけで、拒否感を覚える高齢の方は少なくないと聞いています。

義父母の認知症が発覚する前、実は何度か地域包括支援センターの職員さんが自宅を訪問し、要介護認定の申請を勧めてくれていたのですが、答えは決まって「うちはまだ必要ありません」だったと聞いています。「もっとほかのお困りの方を助けてさしあげてください」とも言っていたそうです。

「要介護認定の調査が入ります」と伝えて、「そんなものは必要ない」「頼んだつもりはない!」などという話になるのはぜひとも避けたいところです。ただ、あまりにとっぴなウソを重ねると、こちらも帳尻合わせが苦しくなるので、ほどほどにぼかした“役所の人”で切り抜けることにしました。

回を重ねるごとにこちらもずぶとくなり、義母の区分変更(本人の心身状態に変化があった際に、新たに要介護の判定し直してもらうこと)のときなどは「80歳を超えた住民のところには定期訪問がある」「いつ順番が回ってくるかは人によって違うので今回は、おかあさんの番」など、口から出まかせをペラペラと……。このあたりの話はまた別の機会にご紹介したいと思います。

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