「要介護3 おめでとう!」区分変更をポジティブに もめない介護132
更新日 編集協力/Power News 編集部
介護保険サービスを利用するために必要な「要介護(要支援)認定」。運転免許証と同じように、有効期間が決まっています。2021年(令和3年)4月の介護保険制度改正によって、更新認定の直前の要介護度と同じ要介護度の場合、有効期限の上限が36カ月から48カ月に延長されました。
つまり、「要介護2」だった人が更新時に再び「要介護2」と認定されたら、その結果が次の4年間は有効というわけです。もっとも、心身の状態に変化があれば、「区分変更」を申請すれば新たに要介護度を判定し直してもらうこともできます。
区分変更のきっかけは病気やケガ、認知症の進行などさまざまです。我が家の場合は、最初の認定調査から3カ月ぐらい経ったころ、義母の区分変更を経験しています。
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最初の認定調査では、義父母はそろって「要介護1」と判定されました。訪問看護や訪問介護、通所リハビリ(デイケア)などの介護サービス利用が始まると、これまで分からなかった生活ぶりが少しずつ見えてきます。サポートを受けながら、これまでどおり夫婦ふたり暮らしを継続することは可能。でも、義父はともかく、義母は「要介護1」ではサポートが足りないかもしれない。区分変更の申請を検討してみたらどうかと助言してくれたのは、訪問看護師さんでした。
今回は、区分変更申請に至ったステップと、親とのやりとりを紹介します。
(1)担当のケアマネジャー(ケアマネ)に相談
訪問看護師さんから「区分変更」を勧められたのは偶然、訪問時に居合わせたときのことです。「一応、ケアマネさんにも伝えたんだけど」と言われましたが、この時点ではケアマネさんからは何も言われておらず、改めてこちらから電話をかけてみることに。
電話でやりとりした時点では、ケアマネさんはどちらかというと、区分変更にはそれほど積極的ではない雰囲気がありました。もともと、「おふたりとも受け答えがしっかりしているし、足腰が弱っている感じもないので、もしかしたら『要支援』と判定されるかもしれない」と、地域包括の看護師さんにも、ケアマネさんにも言われていました。でも、ふたをあけたら、2人とも「要介護1」となって、やれやれと胸をなでおろした矢先のことでした。
「どのあたりが引っかかりますか? 区分変更を申請することで何か不利になることがあったりしますか?」
率直に言ってほしいとお願いすると、「ようやく介護サービスに慣れてきたところに、また認定調査が入るとなった時に、おふたりに負担がかかるのではないかと少し心配で……」と教えてくれました。「でも案外、ケロッと受け入れてくださるかもしれませんね」とも。申請する・しない、どちらを選ぶにしても一長一短はありそう。結論は保留にし、主治医の先生に相談してみようという話になりました。
(2)もの忘れ外来で医師に相談
もの忘れ外来の定期受診の際、「看護師さんから区分変更を勧められて……」と主治医に相談しました。先生からゴーサインが出たら区分変更を申請するし、「区分変更するほどでもなさそう」と渋られたらゴリ押しはしない。そんな方針をあらかじめ、ケアマネさんとは決めていました。
「いいんじゃないですか。申請しましょう」
主治医は即答。あまりにアッサリと了承が得られたので、やや戸惑ってしまったほど。先生が言うには、「高齢者のふたり暮らしは、とにかく普段の生活の様子が分かりづらい。介護サービスが入ってようやく、どのようなサポートが必要なのか見えてくるんです」。
訪問してくれている看護師さんや介護士さんから「区分変更したほうがいい」と言われているなら、そのとおりにしたほうがいいと言うのです。
(3)ケアマネさんを通じて区分変更申請手続き
初めての要介護認定は役所に足を運び、自分で申請しましたが、区分変更はケアマネさんを通じた申請でOKとのことで楽チンでした。後日、役所から電話がかかってきて、認定調査の日程などを調整しました。
看護師さんから区分変更を勧められたのが、7月中旬を過ぎたころです。8月上旬にもの忘れ外来で相談し、お盆の時期を避けて9月になるのと同時にケアマネさんから区分変更を申請してもらい、9月中旬に再び認定調査を受けるといったようなスケジュール感でした。
義父母には、初回と同じく、「役所の人が来る」と伝えています。義父母はさほど興味は引かれなかったようで、「あら、そう」と気のない相づちを返す程度。本音を言えば、事前に片づけなどしないで、“いつも通り”でいてほしかったのですが、下手なリクエストをすると“やぶへび”になりかねないと思い、こちらからは特にこれといって伝えずにおきました。
(4)認定調査当日は警戒モード
区分変更の対象は義母のみ。初回は夫婦ふたりに対して、まんべんなく質問されたのに、今回は自分ばかりが聞かれることを不審に思ったのか、義母は調査員さんに質問されればされるほど不機嫌になっていきました。
「介護保険を使っている人全員にお話を聞くことになっているんですよ。今回はたまたま、お母さんの順番らしいですね」
そう伝えると、「あら、そうだったの」と緊張がゆるみ、「早く言ってちょうだい。心配して損しちゃったわ」と言って笑ったりもするのですが、しばらく経つと、「私、どこか悪いの?」「どうして私だけ質問されるの? これは何かのテスト?」と義父を質問攻めにしていました。義父もややウンザリした様子で「いいから、聞かれたことに答えなさい」と、いさめていました。
そんなふうに神経がたかぶっている状態の義母の目を盗んで、調査員さんとこっそり話をするのは至難の業です。初回の認定調査での経験もふまえてブラッシュアップした「認定調査用メモ」はあらかじめ作ってありましたが、メモを見せたり、補足説明をしたりするタイミングがありません。マジか!
(5)見送るフリをしながら調査員さんと情報共有
とうとう認定調査が終了する時間が来てしまい、万事休す! 調査員さんを玄関まで見送ったときに、とっさに出てきたのがこのセリフでした。
「ちょっとそこまでお見送りしてきます」
調査員さんと一緒に外にでて、最初は門の前で立ち話をしていたのですが、5分も経たないうちに義母がひょっこり顔を出します。
「あら、まだいらしたの?」と声をかけられ、大あわて。「ちょっとついでに買い物に行ってきます!」と、調査員さんと一緒に歩き始めましたが、夫の実家は住宅街にあり、近くにはコンビニひとつありません。不便!
結局、角をひとつ曲がって、実家から死角になっている場所で調査員さんにメモを渡し、補足で説明をいくつか。「お嫁さんも大変ですね。がんばってください」と、やや同情気味に励まされながら、なんとか認定調査を終えることができました。
(6)結果は「要介護3」 義母はパニック!
「真奈美さん、大変なことになっちゃったの……!」
義母から電話がかかってきたときは、肝が冷えました。「バッグがない」「財布に小銭しかない」「紙おむつがなくなった」「薬が消えた」など、こまごまとしたトラブルは日常茶飯事でだいぶ慣れてきていましたが、とうとう“大変なこと”が起きてしまったか……!と。
よくよく聞くと義母が言う“大変なこと”は、役所から「要介護3」を知らせる手紙が届いたということでした。
義父母がうっかり書類を紛失してしまわないよう、区分変更の結果が届くタイミングに合わせてケアマネさんが訪問し、書類を預かる手はずになっていました。でも義母は待ちきれず、届いた封書の中身を見て大ショック!
「普通は『1』の次は『2』でしょう? この間は『要介護1』って書いてあったのに、今度は『要介護3』って書いてあるのよ!」
義母はあわてふためきながらも、正確に数字を報告してくれます。記憶もたしかだし、要介護度への理解もバッチリ。おかあさん、すげえ!
義母のテンションが急速に回復したひと言
「ああ! 要介護3ですか。おめでとうございます!!」
電話の向こうでムッとする気配がありましたが、気にせずに「おめでとう」「よかった」を連発します。
「ホント、よかったですね。この『要介護~』っていうのは、数字が大きくなればなるほど、選択肢が増えるんですよ」
「あら、そう……」
「数字が大きい人ほどたくさん、介護サービスを利用できるんですけど、利用しても、利用しなくてもいいんです。必要に応じて、選べます」
「利用しようと思えば、利用できる範囲が広がるってことね?」
「そのとおりです!」
“この世の終わり”みたいな声で電話をかけてきた義母のテンションは急速に回復。「いいことなら分かるように書いてほしいわよねえ」と、“お役所の書類”の悪口でひとしきり盛り上がり、フォローは完了。義母の「要介護3」生活が始まったのです。