もめない介護

オレオレだけじゃない 高齢者を狙うセールス電話 もめない介護129

ポスター「詐欺犯人追跡中」
コスガ聡一 撮影

夫の実家で電話をとる機会が出てきたのは、義父の入院がきっかけでした。それまでは義父母が応対していました。

「どこからの電話だった?」
「あら、どこからだったかしら。えーっと、どこかにお勤めのどなたかだと言ってたみたいだけど」
「それじゃわからないよ」
「そうですね。オホホ」

電話を切ったあとに、義父母がそんなやりとりをしているのを何度か目撃していましたが、本当に困ったふうではなかったこともあり、“まあ、いいか”と、お二人任せていたのです(ケアマネさんとのやりとりなど、連絡がつかないと困るものは別途こちらで引き受けていました)。

義父母に代わって電話に出るようになって驚いたのは、セールス電話の多さです。
「奥様ですか? そろそろ畳を交換なさる時期かと思いまして」
「先日、お伝えした羽毛布団の件ですけど、いまなら3割引きになりますが……」
「健康食品のご案内でお電話しました」
などなど、次々と親しげな声で電話がかかってきます。誰だよ!

こちらも読まれています : 名前がわからない…夫と決めた2つのルール

「会社名とお名前をうかがえますか」
「必要ありません」
「両親にすべて一任されております」

セールスお断りロボットのように、淡々と相手の情報を聞き、セールスを断り、電話を終えたらメモ。一応、社名と名前を聞いているのは今後、義父母の電話応対が再開する可能性もあったためです。

高齢者の財布は常に狙われている

そうこうしているうちに、また電話が鳴り始めます。これまで何事もなくこられたのがすごいと感心するぐらい。“オレオレ詐欺”にしろ、強引なセールス電話にしろ、いつ何に引っかかってもおかしくないぐらい、高齢者の財布は狙われていることを実感します。

「非通知の電話には出ないほうがいいかもしれません」
そう伝えても、義父母には「非通知かどうか」を判断するのが難しい。「電話のベルが鳴り始めたら、すみやかに受話器をとる」という習慣が定着しているので、そこに新たなステップを加えようと言われても困ってしまうのです。
「最近はオレオレ詐欺などもはやっているので、電話口で名前を名乗るのはやめてみましょうか」
そう提案してみたこともありますが、これもまた義父母にとっては「××です」と名乗るのが当たり前。そもそも、「電話に出て名乗らない」なんて“失礼”なことはできないという抵抗感も邪魔します。難しい!

さらに、ポストに投函されるチラシも要注意です。
「排水管の点検が必要だって、町内会からお知らせが来たんだけど……」

義母が見せてくれたのは「排水管の高圧洗浄が3000円」と書かれたチラシです。義母は町内会のお知らせだと思い込んでいましたが、業者がポスティングしたもの。しかも、低価格が強調してありますが、よくよく読むと3000円は1カ所あたりの金額で、排水管の長さに応じて料金がかかる旨が小さな文字で説明されています。これ、実際に頼んだら3000円どころか高額な費用を請求されるヤツでは!?

自治体も注意喚起する、排水管高圧洗浄の勧誘

スマホで「排水管 高圧洗浄 チラシ」で検索すると、自治体が「排水管高圧洗浄のチラシにご注意ください」と注意喚起しているサイトが次々にヒットします。

独立行政法人・国民生活センターも「排水管の点検や洗浄の勧誘にご注意」というリリースを発表していました。国民生活センターによると、排水管などの洗浄サービスによる相談は、2019年度には2000件を超えて増加。事業者の突然の訪問や、低価格を強調したチラシをきっかけとしたトラブルが多く見られるそうです。

「排水管の無料点検を行っている」
「近くのマンションで排水管が詰まって大変なことになった。近所で掃除が必要なお宅があるのではないかと思い声をかけている」
「排水管工事の確認がしたい」
などは、訪問した業者の売り文句。「無料で点検してもらえるなら」と点検を了承すると、「このままでは大変なことになる」と排水管洗浄を勧められるという流れでした。

トラブルを未然に防ぐためには

一方、「安いし、頼んでみよう」と依頼したら、当日になって「この詰まりは普通の洗浄では直せない」と言われ、金額アップ。さらに、依頼していない箇所まで点検・洗浄されて……というケースもあるとか。
国民生活センターでは、こうしたトラブルを防ぐために、以下の4つをアドバイスしています。

(1)「無料で点検する」などと勧誘してくる事業者に安易に応じない
(2)チラシに表示されている料金の条件や内容は慎重に確認しましょう
(3)事業者の説明をうのみにせず、必要がない契約はきっぱり断りましょう
(4)トラブルになったときには消費生活センターなどに相談しましょう
(参考)http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20201015_1.pdf

これらはとても大事なことですが、高齢の方だけで対応するのは難しいとも感じます。
我が家の場合も調べた結果を義母に伝えると「頼まなくてよかった!」と安心していましたが、その15分後には、ちょうど来てくれていたヘルパーさんに「やっぱり水道管って掃除が必要かしら?」と再び相談。わたしが夫の実家にいた数時間の間だけでも、3~4回は同じやりとりが繰り返されました。

あれ?と思った時に、親が相談しやすい雰囲気づくりを

チラシを見るたびに気になるのだから、すみやかに処分したい。でも、それはこちら側の理屈です。義母は「気を付けるためにも、チラシは捨てないでほしい」と言います。そして、3000円と書かれたと箇所を赤ペンでぐるぐると囲んだりします。それ、余計に危ないやつだから!

義母「ねえ、あなた、このチラシってどう思う?」
ヘルパーさん「これはお願いしないほうがいいですね。たぶん、けっこうな金額をとられちゃうと思いますよ」
義母「やっぱり! 怪しいと思ったのよ」
わたし「さすがおかあさん! 変だなと思った時に、ヘルパーさんに相談したのも活眼ですね」
義母「やっぱり、こういうことはプロの方に聞くのがいちばんでしょう?」
ヘルパーさん「いつでもご相談くださいね」

そんな茶番劇を何度も繰り返したあと、ようやく義母は「チラシを捨ててもよい」と納得してくれました。

最近では、「迷惑電話」「オレオレ詐欺」防止機能が付いた電話など、さまざまな商品が登場しています。親が元気なうちにこうした新アイテムを導入し、少しずつ慣れてもらうのも一案です。ただし、すべてのトラブルの種を回避できるわけではありません。あれ?と思った時に親が相談しやすい、しまったと思ったときに伝えやすい雰囲気づくりが、老後のトラブル回避&早期解決にひと役かってくれるのではないかと信じ、今日も右往左往しています。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について