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今日はなんの日、ふっふ~♪ カレンダーの落とし穴 もめない介護126

手芸をする人
コスガ聡一 撮影

「いまあるカレンダーだと予定が分からず、お困りのようなんです」

ある日、義父母(ともにアルツハイマー型認知症)を担当してくれているヘルパーさんに、そっと耳打ちされました。たしか、訪問介護サービスの利用が始まった翌々月ぐらいのタイミングでした。

当時、義父母(主に義父)は、
[1] 日めくりタイプのカレンダー
[2] 月間カレンダー(日付のみ・予定の記入欄なし)
を愛用していました。電話の横には
[3] 月間カレンダー(予定記入欄あり)も
かけてあり、電話をしながらメモする場所としても、使われているようでした。

でも、日めくりタイプは、めくるのを忘れる日がちょくちょくあるのか、1カ月以上前の日付になっています。そもそも、古い日付のページも切り取ることなく洗濯ばさみで止めてあるだけのため、何かの弾みにバラバラと戻ってしまいます。

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何度か気になって、「これって古い分はちぎってしまってもいいですか?」と義父に尋ねましたが、そのたびに「そのままにしておいて」と言われます。よく見ると、日付の横に、うっすーい鉛筆書きで、血圧の数字や入浴時間がメモしてあります。とっておいたところで見返すことはまずなさそうですが、義父としては捨てるわけにはいかない大切な記録のようです。引き換えに「今日が何日なのか」は、さっぱりわからなくなっているけれど。

介護サービスという名の新たな“予定”が次々と

[2]の月間カレンダーは、日めくりタイプよりはこだわりがないようです。ヘルパーさんが来たときに「月が変わったので古いものは切り取りますね」と声をかけたら、機嫌よくOKしてくれたとのこと。こちらは、何カ月も前のものがかかっているわけではありません。裏を返せば、「そこまで見ていないカレンダー」ということでもあるようです。

義父母とのおしゃべりをもとに推理すると、これまでは、日々の予定を日めくりで管理し、月単位や年単位のざっくりしたスケジュールの流れは[2]の月間カレンダー(予定記入欄なし)で大まかに理解。突発的に差し込まれる予定はたいてい電話で知らされるので、電話横にある[3]の月間カレンダー(予定記入欄あり)で把握していたようです。

ただ、加齢と認知症の両方から来る「もの忘れ」が増え、義父母にとってスケジュール管理は難しくなりつつありました。そこに加えて、介護サービスという名の新たな“予定”が次々と……。ようわからん!となっても不思議ではない状況にあったのです。

予定がイマイチわからないままに、「訪問看護です」「訪問介護です」とかわるがわる“来客”がある。寡黙だった義父は何も言いませんでしたが、義母は「忙しくて大変なの」「気が休まらない」と、しょっちゅうこぼしていました。

このまま放置すると、ストレスが積もり積もって「そもそも介護サービスなんてお願いするのが間違いだったのだ!」なんて話に飛び火しないとも限りません。大至急、夫の実家のカレンダー環境の改善にとりかかることに。カレンダー選びなんて簡単そうに思いますが、もの忘れがちょこちょこ出始めた高齢者の二人暮らしにぴったりなカレンダー選びとなると、ひと筋縄ではいきません。

こんなすったもんだが待ち受けていました。

(1)「予定が見やすいカレンダー」を探す(時季外れだと見つからない!)

すでにある[1]日めくりタイプのカレンダー、[2]月間カレンダー(日付のみ・予定の記入欄なし)、[3]月間カレンダー(予定記入欄あり)は、いずれも「予定を確認する」という目的を果たせていません。

そこで新たに、その役目を負ってくれるカレンダーを追加投入することに。
・曜日と数字が大きくて見やすい
・予定を記入する欄が大きめ
という条件で探しましたが、これが意外と難しい。ちょうど秋口に差し掛かったころ、という中途半端なタイミングだったこともあって、かなり苦戦しました。

(2)「月曜始まり」は違和感のもと

ようやくAmazonで、これならいけそう!というカレンダーを見つけ、夫の実家に持ち込みリビングに設置。「とっても見やすいわ。ありがとう!」と義母は歓迎してくれましたが、実は落とし穴が!

このカレンダー、「日曜」始まりはすでに売り切れており、私が購入したのは「月曜」始まり。義父母が引っかかるようなら次の手を考えようと思っていましたが、喜んでいるならまあいっか、と流したのですが……。義母がヘルパーさんに「このカレンダー、ちょっとヘンなの」「とっても見づらくて……」と文句を言いまくっていたことが、のちに判明。どうも嫁に気を遣って、歓迎するフリをしてくれていたようなのです。ややこしい!

(3)1カ月ごとにカレンダーをプリントアウト

翌年のカレンダーが出始めるまであと数カ月。時期も時期で、替えのカレンダーを見つけるのが難しかったため、思い切って「1カ月ごとにカレンダーをプリントアウトする」という作戦でしのぐことに。ありがたいことにGoogle検索すると、カレンダーのフォーマットがいくつもヒットします。

なるべく文字が大きく、太く、くっきりしていて見やすそうなデザインを選び、ダウンロードしたPDFファイルをA3用紙に印刷すれば、できあがり! この作戦はのちに、義父が入院したときも大いに役立ちました。ベッドからも見やすい位置に印刷したカレンダーを貼り、入院日やお見舞いに来た日を書き込むことで、義父の不安をやわらげることができたのです。

(4)日めくり電波時計を入手

月間カレンダーはリニューアルしたものの、これだけでは「今日が何日なのか分からない」は解決しません。そこで日めくりカレンダーのデジタル版である「日めくり電波時計」を購入。液晶画面に日付と曜日、時間、気温や湿度が表示されるものです。

これもあれこれ見比べて購入しましたが、できる限り画面がシンプルなものがおすすめです。情報がたくさん表示されているほど、迷わせてしまう原因になるためです。

こうして、義父母が使っていた[1]日めくりタイプのカレンダー、[2]月間カレンダー(予定記入欄なし)、[3]月間カレンダー(予定記入欄あり)は、役目を終えました。でも、いずれも処分はせず、場所も動かさずそのままにしておきました。これまであったものがなくなると「ドロボウが出た」などと大騒ぎになる可能性があったためです。

親から見たときに、変えてほしくないものはなるべく変えない。かといって、「いまのままでいい」をうのみにするのではなく、生活に支障をきたす部分にはちょっと手を加えてみる。行きつ戻りつしながら、親がこだわりたいポイントを少しずつ理解していくことは、お互いのストレス緩和にも役立つのではないかと考えています。

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