慰めるつもりの「私もそうよ」で傷つく心 本人の努力を無視していない?
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
あなたのその
「共感的態度」が大キライ。
じゃあ、あなたも私のように、
薬を飲みますか?
私の悩みを一般論に置き換えないで。
それなのに私はワガママに願う。
あなたには私を
理解してほしい、と。
訪問介護員をしていた、
20代の夏の話です。
私は認知症がある利用者さんと、
タクシーに乗っていました。
車内で「また、忘れ物をした」とため息をつかれたその方に
「私もよくしますよ」と、
何気なく伝えた時のことでした。
その方は、ぴしゃり、とこう仰ったのです。
「あなたと私を、一緒にしないで」
全身に水を浴びせられた気持ちになりました。
今でも思い返すたびに、自身のいたらなさ、厚かましさにもだえます。
認知症当事者の多くの方々は、
症状から起こる「小さなミス」を、
受け止めながら過ごされています。
それは性格うんぬんではなく、
認知症当事者になった御本人の、
自己受容の努力のたまものです。
当時の私は、その姿勢を理解できていませんでした。
そのミスは誰にでもある、と伝えることは、
ある意味、御本人の努力を無に帰することだったのです。
共感は、簡単ではありません。
人ひとりを理解することなど、
できないからこそ、
せめてもの想像力が必要なのでしょう。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》