孤独な高齢者につけこむ詐欺 被害を防ぐ一番の鍵は「ご近所さんの目」
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
特に都会は「仕事」がやりやすい。
孤独な年寄りだらけだからな。
そのふところにつけ込んで、金を巻き上げるのが俺の仕事。
いたいた。
あれが去年、奥さんを亡くした杉山さんか。
人恋しそうで好都合だし、足腰は丈夫そうでなにより。
あの体なら一人で、ATMに行けるな。
なんてこった!
この爺さん、近所付き合いがあるのか。
その目が一番厄介なんだよ。
逃げよう、こんな街は仕事もあがったりだ。
特殊詐欺。
いわゆる「オレオレ詐欺」が高齢者に行われようとした現場に、
数回遭遇しています。
驚いたのは加害者が、当人の家族構成や財産の有無はもちろん、
身体機能、日中の過ごし方、果ては交友関係まで調べ上げていたことです。
実際の犯行は電話だけで行われましたが、
被害者達はその前からどこかで観察されていたのかもしれません。
また、犯罪者が高齢者宅へ下調べに来た際に、私の知人が遭遇したケースもあり、
その用意周到さを痛感しました。
幸い、どの詐欺も未遂で済んだのですが、
それは「第三者の目」があったからこそでした。
「もしかして、詐欺にあっているのかも」
普段とは違う様子の当人に、
第三者が声をかけたことが発端となり、被害が出ずに済んだのです。
警察庁によると、2020年の特殊詐欺の発生件数は1万3550件。
その被害者の85.7%が高齢者で、被害は大都市圏、特に東京に集中しています。
そして、家族が傍にいない、独居の高齢者が狙われがちなのは明らかです。
犯罪を減らす鍵は、
私たち一人ひとりが「ご近所さん」として、
高齢者に関わっていくところにあるのではないでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》