セクハラは犯罪 介護の場でも同じです 泣き寝入りせず、語れる社会に
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
老いた手が、介護士の体を触った。
「冗談だよ」と彼は笑った。
介護士は勇気を出して、同僚に相談した。
でも皆、困ったように笑うだけ。
誰も、性を語ることに慣れていなかったから。
だからこそ私たちは、
迷いながらでも、話し合う必要がある。
性は、私たちの命のこと。
守られるべき、人権そのものなのだから。
一部の高齢者が、嫌がる介護士の体を触ったり、性器を見せつけたりする等の行為があります。
セクハラ、と呼ばれますが、
その軽い名称のためか、個人によっても受け止め方は様々です。
私も被害経験はありますし、これを読まれている方にも被害者がいらっしゃるでしょう。
なかなか表沙汰にならないのは、職員間で、
「高齢者のご家族に知られては、可哀想だ。内々で済ませよう」
「もう高齢なのだから、大目に見よう」
などと、高齢者への気遣いから内々で対処されることが、多々あるからです。
しかし、セクハラは犯罪です。
職員間にその共通認識がないと、
「まあ、このあたりで」という、曖昧な対応になりがちで、
被害者は取り残され、
加害者は行動を改める機会を失うばかりです。
特に「女性は一歩下がるのが、当り前」という時代の空気を生きた世代には、
セクハラ=犯罪という理解に至りづらい傾向があるように見えます。
だからこそ、介護士チームの総意として、
「今、セクハラは、冗談では済まされませんよ」と冷静にお伝えすることが大切です。
一人ひとりの性は、侵されざるべき人権です。
高齢者だから、介護士だから、と、
なあなあで済ませていいわけがないのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》