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大量発見!義父母宅の古い薬 “捨てない世代”への説得法 もめない介護110

たんぽぽの綿毛
コスガ聡一 撮影

離れて暮らす義父母が立て続けに認知症だと診断され、介護のキーパーソンとしてお2人の生活にかかわり始めたとき、困ったことのひとつに「薬の管理」がありました。義父は持病の高血圧や前立腺肥大のほか、もの忘れ外来でもらう薬に整腸剤なども含めると10種類以上の処方薬を飲んでいました。

一方、義母が飲んでいる薬は2種類と少ないものの、認知症由来の「もの盗られ妄想」があったため「ドロボウにとられるとマズいから」と家のあちこちにしまい込んでは行方不明になることが頻発。欲しいときには、薬の行方がわからない。「2階に住んでいる女性(幻)がまたとっていった!」と訴えることもしばしば。義母が深刻に落ち込むことがないよう、「ずいぶん病弱なドロボウなんですねえ」と笑い飛ばしつつも、こりゃまいったなと思っていました。

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日々の服用管理については、壁に掛けて使用する「お薬カレンダー」(曜日や日付、時間帯ごとに間仕切りがあり、服用する薬を仕分けてセットしておける)を導入、訪問看護師さんやヘルパーさんに声がけや薬の飲み忘れのチェックなどを協力してもらいながら、少しずつ環境を整えていきました。

夫婦2人暮らしで声を掛け合うことで、そこそこ飲み忘れは防げていたし、特定の薬を一切飲まないといったことも、幸いなことにありませんでした。ただ、厄介だったのが「古い薬」の扱いです。

未使用の処方薬が大量に見つかる

義父母はしょっちゅう薬をなくす一方で、家の中にはいつ処方されたのかよくわからない古い薬がたくさんありました。部屋の片づけを手伝うと、あっちの引き出しからも、こっちの引き出しからも薬局で渡される薬袋が出てきます。中から手つかずの錠剤や粉薬が大量に出てくることも珍しくありませんでした。

「おなかの調子が悪い」「風邪っぽい」「腰が痛い」「ひざが痛い」など、何かしらの不調を覚えるたび、義父母はその都度、近所のかかりつけ医を真面目に受診。薬をもらってきて満足し、そのままになっていたこともあれば、しまいこんで忘れてしまったこともあったようです。ドラッグストアで薬を買う習慣はあまりなかったようで市販薬は虫刺されの薬が5本ぐらいで済みましたが、それにしても大量の処方薬に、最初は圧倒される思いでした。

次から次へと見つかるこの大量の薬をどうしたらいいのか。困っていたときに相談に乗ってくれたのは、もの忘れ外来に併設されていた薬局の薬剤師さんでした。義父母の家で見つかった薬は別の薬局で処方されたものですが、「とにかく持ってきてみてください」と言われるがままに持っていくと、再利用できるもの・処分するしかないものを見極めてもくれました。また、「飲み忘れるとマズい薬」(高血圧の薬など)、「飲み忘れてもさほど支障はきたさない薬」(整腸剤など)を改めて説明してくれたのも助かりました。

薬局でもらう薬の説明書も薬と一緒に保管はされていたものの、あまりにカオスな状況に読む気にもなれなかったというのが正直なところです。「慌てなくても大丈夫」と教えてもらったおかげで、こちらの気持ちもやっと落ち着き、薬の現況を把握してみようという気になれたのです。

処分する?しない?静かな攻防戦

もっとも、「処分するしかない薬もわかってスッキリ!」というのは、あくまでもわたしの感想で、義父母はもらった薬を処分するつもりは一切ありません。昭和一ケタ生まれの義父母にとって、“まだ使えるモノ”を捨てるのは万死に値する行為です。

薬剤師さんに相談して再利用できる薬は再利用していると伝えると、「それはよかった」と喜んでくれるのですが、残りの薬(再利用できないもの)を処分していいかと尋ねると、顔色が変わります。

義父 「いつ必要になるかわからないから、そのままにしておいてください」
義母 「ありがとう。あとはこちらでやっておきますから」

口調こそ丁寧ですが、義父母ともに、一歩も引かない構えです。

訪問看護ステーションに相談すると、「おふたりとも認知症がありますし、誤って飲むと怖いですからできれば処分していただきたいです」とピシャリ。一方、ケアマネさんからは「無理に処分すると、ご両親(義父母)との関係がこじれてしまうかもしれないので、少し様子を見たほうがいいかもしれませんね」というアドバイスがありました。

どっちが言うこともわかる! 不必要なリスクはさっさとなくしてしまいたくてウズウズするけれど、ここで短気を出すとかえってややこしいことになるような気がします。でも、黙って見ているのもじれったい。迷った末に選んだのは“説明はするけど、説得はしない”という方法でした。

わたし「食べものに賞味期限があるように、薬にも使用期限があって、それまでに飲みきる必要があるんです」
義父「なるほど」
義母「テレビで見たことがあるわ。あなた知らなかったの?」
義父「知ってたよ」

知ったかぶりをする義母にちょいちょい邪魔されながら、「古い薬は飲まないほうがいいこと」「誤って飲まないように、できれば処分したいこと」を伝えます。

モノを捨てられない世代にぴったり?薬の管理スタイル

使用期限そのものについては「気をつけなくてはいけませんな」と、少なくとも義父は前向きに受け止めてくれていました。しかし、薬を処分するとなると、やはり気持ちがついていかないようで、「うん……」と黙り込んでしまいます。そこで、「処分したい」という提案はいったん棚上げすることに。

わたし「間違って飲んでしまうとアレですから、別の引き出しにまとめてしまっておいていいですか?」
義父「そうしてください」

薬を捨てるのはやめたらしいとわかった途端、義父母はニコニコ。一気に場の空気がほぐれます。
わたし「“お薬カレンダー”以外の薬を飲むときは、念のため、看護師さんに飲んでも大丈夫なものかどうか見てもらってくださいね」
義母「それはいいアイデアね! きっとそうするわ。ねえ、あなた」
義父「そうだな。そうしよう」

訪問看護は週2回しかないので、義父母が気まぐれに古い薬を飲もうとしたときに、近くに看護師さんがいるとは限りません。そもそも、このやりとりも翌日になれば、スルリと記憶から抜け落ちているかもしれません。ただ、何も言わないよりは多少のストッパーになるかもしれないと思って伝えたことでしたが、あまりに義父母のリアクションがノリノリなので、だんだん面白くなってきます。そんなに薬を捨てるのがイヤでしたか!

薬は、その後もなくなったり見つかったりを繰り返し、管理スタイルが安定するまで半年以上かかっています。ただ、誤って古い薬を飲んでしまって大トラブル!といった事態には陥らずにすみました。また、落としどころを探る過程で義父母の薬に対するこだわりも理解できたことも、その後のもめごと回避に役立っているように思います。

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