認知症とともにあるウェブメディア

今日は晴天、ぼけ日和

若手とベテラン、正社員とパート。気が合わない私たちの密かなリスペクト

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

互いを横目で見る二人

林さん(56)と、森さん(31)。

林さんはパートタイマー、
森さんは正社員として、
同じ高齢者施設で働いている。

ふたりは、気が合わない。

『また、このタイミングで森さんだ』「立てますか」

でも、林さんは気付いていた。

林さんが関節痛をこらえながら、
高齢者を抱えようとする時、

いつも森さんが現れ、
介助をさりげなく代わってくれることを。

「大丈夫ですよ」『林さんのあの安定感。私はまだまだ敵わないな』

そして、森さんも気付いていた。

この施設には、
林さんの存在が必要なことを。

2人は、気が合わない。
でも、共にこの場をつくっている。

働き盛りの世代と、
体力の落ち始めた世代が、
同じ高齢者施設で、働く。

よくある状況ですが、私自身、
そこで生まれる摩擦を
多く体験してきました。

なぜ、摩擦が生まれるのか?

その理由のひとつに、
仕事内容の差が、挙げられます。

全ての方ではありませんが、
身体的な衰えから、
50代60代の方には難しくなる、
実務が出てきます。

それをカバーするのは、
大体において、若い世代なので、
そこに差が生まれるのです。

そこには双方に、割りきれない思いがあるでしょう。

そういう場に居合わせたとき、私の場合は、
林さん、森さんのような方々に、
助けられてきました。

「お互いさまだから」

全てを解決できなくとも、
誰かひとりのいたわりの姿勢から、
ほぐれていくものは、必ずあります。

そして、その職員間の空気は、
職員の心を安定させるだけにとどまらず、

高齢の方々の居心地にまで、影響してゆくのです。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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