「何もしない」をする ただ隣にいるだけという価値は思った以上に
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
高齢のあなたと、
私の間にできた、自由時間。
正直、間がもたない。
私は、なにをしたらいいのだろう?
じゃあ、一緒に体操でもしましょう。
一緒に、一緒に。
一緒にいるのに離れてゆくような、
この虚しさはなんだろう。
なんにもしない、って
なんでこんなに難しいんだろう。
ただ一緒にいる。
その余白の時間こそ、
あなたの心に触れられる時。
「認知症当事者の方々と、なんにもしないで過ごすこと。本当はそれがしたいんですけど、実際、難しいんですよね」
先日、とある認知症カフェの開催に関わっている方が、ひとりごとのように漏らしました。
私は、私の心の内を言われたようで、ぐっと、言葉に詰まりました。
『なんにもしないことが、難しい』
これは、私が認知症対応デイサービスに勤務していた時から、常に抱えている、モヤモヤです。
認知症カフェにしろ、高齢者施設にしろ、提供者側は、
利用される方の時間を少しでも、価値あるものにしよう、と必死です。
でも、
なにかをしなければ、価値は生まれないと、思っているのは提供者側だけで、
案外ご本人は、ただゆっくり、お話をしたいだけかもしれません。
提供する、のではなく、
ただ隣りにいる、という、
静かな忍耐の価値を思います。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》