81歳、認知症の疑い 専門外でも正確な診断はできる?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
介護の次世代育成に取り組む坂本雅子さんが、介護・支援活動を生かして認知症の様々な悩みに答えます。
Q.一人暮らしの父(81歳)の様子が最近おかしく、認知症ではないかと疑っています。病院に連れて行くために帰省しようと思うのですが、実家の近所には認知症の専門医がいません。専門医がいる病院に行くには、車で1時間以上かかります。かかりつけの病院で正確に診断してもらえるかどうか不安です。(55歳・男性)
A.私が施設長を務める特別養護老人ホームがある地域にも、認知症の専門医がいないので、不安なお気持ちは痛いほどわかります。時間がかかって大変だとは思いますが、まずは一度、認知症の専門医を受診してはいかがでしょうか。
認知症は、「原因疾患」と呼ばれる脳の病気によって、認知機能に障害が出て症状が出ます。原因疾患には「アルツハイマー病」や「レビー小体病」、「脳血管障害」などさまざまなものがあり、原因疾患によって、症状や治療薬、対応が異なります。このため、診断は認知症の有無だけではなく、原因疾患まで特定してもらうことが大切なのです。そのためにはやはり、認知症疾患医療センターなどにいる専門医に診てもらうのがいいと思います。
まずはかかりつけ医に具体的な症状を説明して、専門医への紹介状を書いてもらいましょう。直接専門医を受診するよりも、スムーズな診療につながります。一度正確に診断してもらえれば、その後は必ずしも専門医がいる病院に通院する必要はありません。「今後は近所のかかりつけ医で診てもらいたい」と専門医に伝えれば、検査結果や処方などを記した診療情報提供書を書いてくれるはずです。それをもとにかかりつけ医が診てくれると思います。
つい先日も認知症のホームの利用者が、夜中に大声を上げるなど、それまでなかった症状が出てきたことがあり、本人も興奮状態でつらそうでした。普段は内科の嘱託医が診ているので、相談したうえで専門医を受診し、精神状態を落ち着けるような薬を処方してもらいました。このように症状が変化したときなども、専門医に診てもらえると安心です。
お父さんの症状は、認知症ではなくほかの病気の可能性もあります。それを見極めてもらうためにも、ぜひ一度専門医を受診してほしいと思います。
【まとめ】父が認知症の疑い。近くに専門医がいなくて、かかりつけ医の診断が不安なときには?
- たとえ遠くても一度は認知症の専門医に診てもらう
- かかりつけ医に専門医への紹介状を書いてもらう