「どうせ話しても分からない」は本当かな。「伝わる」をあきらめない
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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「この話は難しいかな?」
認知症の進んだ母が困らないように
会話を選んでいたら、
話しかけられなくなってしまった。
…でも。
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母には、
話してもわからない。
その僕のあきらめは、本当かな?
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だからもう一度、
母の隣に立ち、話してみた。
母を見つめて、頷いてみた。
この人には、
話してもわからないだろう。
認知症があってもなくても、
どちらかに、そのあきらめがあると、
お互いの孤独は深まります。
たとえば、私に
英語で難しい話をされても
内容は全くわかりません。
けれど、わかることがあります。
感情です。
嬉しそうだな、
辛そうだな、
恥ずかしそうだな。
内容は理解できなくとも、
話してるその人の心は、
なんとなく、伝わってくるものです。
お互いの思いを感じあって、
頷きあうこと。
人と深く心を通いあわせるために、
それ以上のものがあるでしょうか。
そしてその温かさが、
人を孤独からすくう、
命綱になり得るのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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