認知症の息子を介護する父です。家族会になじめません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
若年性認知症コーディネーターの中村益子さんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.若年性認知症の息子(51歳)と2人暮らしです。息子は初期の認知症ですが仕事はやめてしまい、引きこもりのような状態です。相談できるような人がいないので、家族の会に参加してみたのですが、認知症の夫をもつ妻たちが多く、世代も性別も違い、なじめませんでした。孤独で不安がつのります(82歳・男性)
A.家族の会に参加されたんですね。とても大きな一歩だと思います。なじめなかったというのもよくわかります。若年性認知症を介護するのは、配偶者、子ども、親などさまざまですが、家族の会などに参加されるのは、妻が多いというのは、私も実感しています。ただ、まだ少ないですが、男性介護者の会や若年性認知症に特化した認知症カフェなど、相談者がなじめそうな場はあるはずです。そうした情報は、地域の若年性認知症コーディネーターが詳しいと思うので、ぜひ相談してみてください。
私が関わった方の中に、52歳の若年性認知症の娘さんを介護している86歳のお父さまがいました。相談を受けてご自宅を訪問したところ、日中もカーテンは閉め切ったままで、外出するのはコンビニエンスストアか、病院くらいとのことでした。そこで若年性認知症カフェにお誘いしたのですが、ご本人たちは乗り気ではありませんでした。「私がお連れしますから」と言って何とか説得し、当日ご自宅まで迎えに行ったら、2人ともうつむき加減で……。それでも参加してみたら娘さんは当事者同士、お父さまは男性介護者と話ができて、あっという間に時間が過ぎたとおっしゃっていました。最後に参加者でテーブルやイスを片付けるのですが、娘さんも積極的に手伝う姿を見てお父様が私に「娘はまだこういうことができるんですね。家では全くしないので」とおっしゃっていました。そして「来月もまた来ます」と約束して、2人でさっそうと帰って行かれたんです。同じような立場の方とつながることがどれだけ大事なことか、実感しました。
若年性認知症の子どもをもつ親は、子の将来のことなど、心配が尽きないと思います。そして息子さんも若年性認知症ならではの悩み、苦しみを抱えていて、孤独を感じているのではないでしょうか。息子さんのためにもぜひ、当事者の会など、若年性認知症本人や家族が集まるような場に足を運んでほしいと思います。相談者も息子さんも悩みを共有できるような仲間に出会えることを願っています。
【まとめ】若年性認知症の息子と暮らしていて、孤独で不安を感じるときには?
- 地域の若年性認知症コーディネーターに相談する
- 若年性認知症当事者の会、男性介護者の会など、悩みを共有できそうな人が集まる場に参加する