訪問看護を始めましたが利用者に毎回追い返されます【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
看護師の石橋さつきさんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.看護師として訪問看護を始めたのですが、認知症の利用者に顔を覚えてもらえず、毎回「何しに来たの? 頼んでない」「お金が目的か」と追い返されそうになります。訪問がストレスで逃げ出したくなります。どうすれば、すんなり受け入れてもらえるでしょうか?(42歳・女性)
A.全く知らない人が突然自宅に来て、家の中に上がり込もうとしたら、どう思うでしょうか? 誰でも不信感を抱きますし、恐怖を感じるものです。記憶障害や見当識障害がある認知症の人にとっては、何度も自宅に来ている看護師であっても、毎回“知らない人”だと感じてしまうことがあります。このため、基本の対応としては毎回自己紹介をして、訪問の目的を説明することです。この利用者は、お金のことを心配されているようなので、「お金は必要ない」ということも付け加えるといいですね。説明する際は、笑顔で相手の顔をしっかり見て話すようにしましょう。“認知症の〇〇さん”ではなく、一個人の“○○さん”という認識で接することがポイントです。こうした対応を積み重ねることによって、利用者の方が安心感を抱き、受け入れてもらえる日がくるのではないでしょうか。
ケアマネジャーなど、本人が顔なじみの人と一緒に訪問することも一つの方法です。可能であれば、本人が安心感をもって受け入れられるようになるまで、同行を頼めるといいですね。同居しているご家族がいれば、同席してもらえるとよりいいでしょう。
もしかしたら、時間帯の影響もあるかもしれません。夕方は疲れが出て、記憶障害や見当識障害の症状がより強く出ることがあります。できれば午前中のうちに訪問するのが理想的です。ただし、朝早いと頭がボーっとするというタイプの方もいます。ご家族などに普段の様子をリサーチして、比較的調子がよさそうな時間帯に訪問できるといいですね。
忘れてはいけないことは、利用者自らが看護師の訪問を望んだわけではないこということです。訪問を依頼したのは、おそらく家族やケアマネジャーであり、だからこそ本人は訪問を受け入れにくい状況になっているのだと思います。本人が望んでいないことからのスタートなので、受け入れてもらうまでにはどうしても時間や回数がかかるという覚悟が必要かもしれません。
【まとめ】看護師として認知症の利用者の家を訪問しているのに、追い返されそうになるときには?
- 毎回「はじめまして」のつもりで自己紹介や訪問の目的を伝える
- 利用者本人が顔なじみのケアマネジャーなどに同行してもらう