認知症当事者が共感「今の自分のほうが好き」長谷川和夫さんの言葉1

「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発した認知症医療の第一人者であり、3年前に自らも認知症であることを公表した者としても知られる長谷川和夫さん。「研究者の自分でも認知症になることを多くの人に知ってほしい」「認知症は特別な病気ではないと伝えたい」と出版した「認知症でも心は豊かに生きている 認知症になった認知症専門医 長谷川和夫100の言葉」がいま、注目されています。この本を読んだ「あの人」の心には、100の言葉のうち、どの言葉が響いたでしょうか。初回は佐藤雅彦さんの登場です。
(編集協力/中央法規出版)

「お茶旅」とは、介護施設と地方の生産者・観光協会などをオンラインでつなぎ、入居者がその地域のお茶やお菓子をいただきつつ、生産者たちと交流できるという企画です。企画やイベント当日について、なかまぁる編集部がお話を聞きました。
佐藤雅彦さん


51歳の時にアルツハイマー型認知症の診断を受けてから15年。当事者の立場からの講演活動や執筆などを行ってきた、佐藤雅彦さん。一時期長谷川和夫さんの診察を受けていたこともあるという佐藤さんは、この本をどう読んだのでしょうか。

●認知症当事者の仲間に薦められて

この本を知ったきっかけは、認知症当事者である知り合いが、SNSで紹介していたからです。私もすぐにインターネットで注文しました。

タイトルからして、認知症になった気持ちや感情面がたくさん書いてあるのかと想像していたのですが、パーソンセンタードケアなど、もっと幅広い内容なので、家族やケアに関わる人が読んでもためになる本だと思いました。

●私の心に響いた言葉

認知症の症状が進んできているという自覚はあります。しかし、自分自身は変わっていないと思うこともあります。「認知症でも心は豊かに生きている」より

実は私も自分の認知症は進んでいると感じます。疲れやすく、外に出ることも嫌になってきました。エレベーターの階数ボタンを押すのに、意識して指に指令を出さないと押せないとか、朝ご飯と一緒に食べようと思っていた梅干しを食堂に持って行くのを忘れたとか、いろいろありますけど、自分のアイデンティティーは変わらないと私も思います。

自分自身としては全然変わっていなくて、文章も書けますし、いろいろ活動もしています。

認知症の症状が進んだとしても、絵画や音楽といった美しいものに触れる生活を過ごしていきたいと思います。「認知症でも心は豊かに生きている」より

私も美しい音楽を聴いたり絵を見に行ったりするのが好きです。ですから、感情の面や芸術を楽しむといった面は、認知症になっても侵されないということを、認知症研究の第一人者が書いてくれているのを読むと安心します。

ここ10年以上、「臨床美術」(編集部注:芸術療法のひとつ)の教室で絵を描いています。最初は人に誘われて行ったのですが、やってみたら無心になれて気持ちがいいのです。先生が最初に「今日はこういう技法を使ってみましょう」とお手本を見せてくれて、あとは無心になって描くだけです。

月に2回続けてきて作品が増えたので、展覧会も何度か開きましたし、今年2月には画集も出すことができました。

知症が進んでも心は豊かに生きています。感性はむしろ研ぎ澄まされています。「認知症でも心は豊かに生きている」より

世の中の、認知症の人に対するイメージは、「何もわからない」「何も考えられない」「プライドがない」というものが多いのですが、それは違います。人一倍感受性が強く、プライドもあるということを、みんなにわかってもらいたいなと思っています。私自身、認知症になってから、人の感情に敏感になりましたし、人生について深く考えるようになりました。

認知症の人は何も考えられないというのは間違いだと身をもって示したくて、考えたことを文章にまとめてSNSで発信したり、親しい人にはメールで送ったりもしています。

●家族や介護に関わる人にも読んでほしい

認知症の本人の気持ちや、考えていることが少しでもわかると介護がしやすいと思います。この本は介護に関わっている人にもヒントになるのではないでしょうか。特に序章と第1章だけでも読んでほしいなと思いました。

介護をしている人は、介護について書かれているところに心を打たれると思いますが、私は、認知症の本人としての長谷川先生がどう感じたかというところに強く共感しました。先生が診療をしながら思っていたことが、自分が認知症になってみると違っていたとも言っています。

私は認知症になるまで、こんなに文章を書いたり絵を描いたりするようになるとは思ってもいませんでした。認知症と診断された後のほうが物事をよく考えるようになったので、今の自分のほうが好きです。私の使命は、認知症で元気をなくしている人に元気を届けることだと思っています。これからも、認知症の人が豊かに暮らせる社会の実現に向けて努力します。

佐藤雅彦さん
1954年岐阜県生まれ。理工学部数学科を卒業後、中学校の数学教師を経てコンピューター会社にシステムエンジニアとして勤務。2005年に51歳でアルツハイマー型認知症と診断される。茫然自失の時期を経て、認知症の体験の講演活動を始める。著書に『認知症になった私が伝えたいこと』(大月書店)など。一般社団法人・日本認知症本人ワーキンググループ理事。
認知症でも心は豊かに生きているの書影
「認知症でも心は豊かに生きている 認知症になった認知症専門医 長谷川和夫100の言葉」
・著者:長谷川和夫
・判型:四六判
・頁数:208頁
・価格:1,300円+税
・発売日:2020年8月10日
・ISBN:978-4-8058-8190-3
・発行:中央法規出版

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