笑顔が心を逆なでする時がある 目を合わせなくてもあなたに届く場所に
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
真っ正面から、あなたは私を圧してきた。
いざとなったら噛み付くぞと、
歯をカチカチさせて。
それならまず私は、後ろに立とう。
視線が合わない距離が、必要な時もある。
今日は、隣に立てる。
でも明日はわからない。
繰り返し、繰り返し。
暴力的な行為がある人へ介護を行うこと。
介護者がうけるストレスを想像するだけでも、気が重くなります。
話しあいや治療で、本人の暴力行為がおさまればよいのですが、改善の道のりにも支える手が必要です。
実際、私が訪問介護チームのひとりとして、
暴力的な利用者への介護中、重要だったのが「立ち位置」です。
言葉にすると、非常にあいまいになるのですが、間合い、のようなものでしょうか。
その日、ご本人の表情や動作が安定されるパーソナルスペースを探し、
出たり入ったりしながら、その都度対応を変えるわけです。
日によっては、介護者の笑顔が本人の気持ちを逆撫ですることもあるわけで、
それは「相手の目を見て、穏やかな表情で接しましょう」のような、基本的な介護技術から外れることでもありました。
人を支えることの難しさを感じつつ、今日もどこかで奮闘している、介護者の姿を思います。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》