無愛想だと決めつけたのはなぜ 歯を食いしばる人と心通わせた小さな声援
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
毎日、リハビリの為に歩く人がいる。雨の日も、足を重そうに引きずりながら、無言で、しかめっ面で。
歯を食いしばり歩く、その人の脇を、誰かが声をかけて通り過ぎた。
ちいさな声援で、心に灯をともし、また、一歩一歩。
この漫画は、早朝、私の自宅前を通る、
「無愛想なおじさん」のある日のできごとです。
この男性が笑うのを見たのは、これが初めてで、こんなに優しく笑えたのか、と驚いたものです。
けれど私はその時、ようやく気づきました。
この方は、歩行状態を見る限り、右半身に麻痺があります。
右麻痺=左脳に損傷がある、ということは、 往々にして言語障害が表れます。
だとしたら「話す、聞く、理解する」などのコミュニケーション手段は困難なことなのかもしれず、
無愛想と決めつけるのは、私の早計でありました。
なので「おじさん、頑張って」も、実際のところ、正確に伝わっていたのか分かりません。
それでも、おじさんのあの笑顔は、
誰かの温かな気持ちが届き、
通じあった証ではないか、と思うのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》