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夫の認知症疑い 子は「気にしすぎ」と我関せずで…【お悩み相談室】

カフェで相談する女性のイメージ

介護支援専門員(ケアマネジャー)の長澤かほるさんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.夫(76歳)が数カ月前からもの忘れがひどく、近所で道に迷うことも多いので、認知症ではないかと疑っています。別に暮らしている子どもたちに話したところ、様子を見に来てくれたのですが、夫は子どもたちの前ではしっかりしていたので、子どもたちは「年齢的にそれくらいのことはある」「気にし過ぎ」といって、とりあってくれません。病院をいやがる夫を受診させるためにも、子どもたちからうながしてほしいのですが……。(72歳・女性)

A.相手によって症状の出方が異なるのは、認知症の人によくあることです。表向きにはしっかりしているように見せられるのは、まだその能力がある証拠。日常生活に大きな支障が出て半年以上経過していなければ「認知症」とは診断されないかもしれませんが、認知症の初期段階か、予備軍である軽度認知障害(MCI)の可能性もあると思います。

 相談者の目的は、「いやがる夫を受診させたい」であって、その手段として子どもたちからうながしてほしい、ということですよね。でも、「父親には認知症であってほしくない」という子どもの立場からの心理が働いているとしたら、実際には認知症を疑っているわけではないので、父親を受診させるところまで動かすことは難しいでしょう。

 まずは子どもたちに、認知症やMCIについての理解を深めてもらうことが先だと思います。相手によって症状の出方が異なること、MCIの段階であれば認知症に移行するのを防げることがあること、認知症でも治療によって進行を遅らせることができる可能性があること、など知識を身に付けてもらうとともに、「進行すると子どもたちに迷惑をかけることになる。そうならないためにも、できるだけ早く対策をとりたい」といったことを伝えてはいかがでしょうか。子どもたちの年代は仕事や育児で忙しく、一緒に暮らしていないので父親のことを自分事としてとらえにくい面もあると思います。将来的に自分にも多大な影響があることが想像できれば、今の行動が変わってくるかもしれません。子どもたちに認知症について学んでもらうためにも、地域包括支援センターなどで、資料を集めてくるのもいいと思います。

 たとえ子どもたちを説得できなかったとしても、目的をかなえるための手段はほかにもあります。夫が受診をいやがっている状況を地域包括支援センターや行政窓口で相談してみてください。さまざまな方法を紹介してくれると思います。自治体によりますが、認知症が疑われる人に保健師などが「健康相談」という名目で自宅を訪問してさりげなく専門医とつなげてくれることもあります。現在はどの自治体にも「認知症初期集中支援チーム」が編成されていて、医療や介護が必要な場合の導入や調整など、自立した生活が送れるように、介護家族も含めてサポートしてくれます。今後のことを考えても、家族だけで介護していくのは難しいものです。子どもたちだけに頼らず、早めに地域のさまざまなサービスを調べて、積極的に活用してほしいと思います。

【まとめ】認知症の疑いがある夫に子どもたちから受診をうながしてもらうには?

  • 子どもたちに認知症についての理解を深めてもらう
  • 放っておくと子どもたちに迷惑がかかるかもしれない、ということを伝える
  • 子どもたちを頼れなければ、地域包括支援センターなどで相談する

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