実家がゴミ屋敷に?母がゴミを拾ってきて困ります【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
介護支援専門員(ケアマネジャー)の長澤かほるさんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(79歳)が近所で一人暮らしをしています。こまめに様子を見に行くのですが、割り箸やプラスチックのトレーなど、ゴミを拾ってきては溜め込んでいます。勝手に捨てると怒られるので毎回説明して処分しています。特に夏はニオイも気になるのでやめてほしいです。(48歳・女性)
A.相談者は、とてもいい対応をされているなと思いました。お母さまが集めてきたゴミを勝手に捨てずに、毎回説明して処分されているからです。割り箸やプラスチックのトレーはお母さまにとってはきっと大事なものですから、説明することはお母さまの尊厳を守ることになります。
収集癖は、認知症の周辺症状の1つです。認知症の人が収集するものとしてよく耳にするのが、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙類です。ある施設の入居者で、トイレットペーパーをクルクル巻き取り、衣類のポケットやリハビリパンツの中にいっぱい詰め込んだり、枕元に山のように積んだりしている、という話を聞いたことがあります。戦争やオイルショックを体験している世代の人にとって、紙は非常に貴重なものという認識があり、見つけると集めずにはいられないのではないかと考えられています。お母さまの場合はなぜ、割り箸やプラスチックのトレーなのでしょうか。これらがないことで困った、といった苦い経験があり、お母さまにとっては大事なものという位置づけなのかもしれません。なぜ割り箸やトレーを集めるのか、どこから持ってくるのか、親子の自然な会話の中で聞いてみるといいと思います。また、年齢や認知症に関係なく収集に依存する人がいますが、お母さまの収集癖は認知症になってから始まったことなのか、ということも見極めるとよいかもしれません。
理由がわかると、拾ってこないようにするにはどうすればいいのか、解決策が見えてくるでしょう。割り箸やトレーがなくて困った経験があるのであれば、少し思い切ったやり方ですが、相談者が新品の割り箸やトレーをたくさん買って、お母さまの家にストックするというのは、いかがでしょうか。これらが家にないと不安で集めてしまうのであれば、ストックがあることで不安が解消され、ゴミを集めてこなくなるかもしれません。
収集癖は根底に不安があり、集めることが心のよりどころになる場合もあるといわれています。お母さまは一人暮らしをされているので、自分はまだしっかりしているという意識はありつつも、実際にはできないことに直面し、不安を感じているのかもしれません。お一人でさみしいという気持ちもあるかもしれません。お母さまの根底にある思いについても、ゆっくりと聞いていけるといいですね。
【まとめ】ゴミの収集癖をなくしてもらうには?
- なぜそれを集めるのかを聞いてみる
- 新品の同じようなものをストックしてみる
- 根底に不安やさみしさを抱えているかもしれないことを意識する