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混ぜるな危険 服薬拒否とヨーグルト 父は認知症【お悩み相談室】

食卓に並んだ服薬のイメージ

居宅介護支援(ケアマネジャー)の市川裕太さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の夫(80歳)と二人暮らしです。服薬に苦労していて、飲ませようと用意しても「俺には必要ない」といって拒否します。ヨーグルトに混ぜたら「変な味がする。殺そうとしているのか」と吐き出してしまいました。認知症のほかに持病もあるので、困っています。(79歳・女性)

A.服薬は「飲まなくても仕方ない」というわけにはいかないので、苦労すると思います。ご家族としては、服薬の時間がくると憂うつになってしまう方もいます。相談者のようにヨーグルトを混ぜるといった手段(わからないうちに内服してもらうこと)が有効な場合もありますが、まずは服薬を拒否する理由から考えてみることが大切です。「俺には必要ない」と言っているので、一つには「自分は元気だ」と思っているのかもしれません。私たちでも、飲む必要性がわからないのに、薬を飲むのは納得ができません。そうなると家族の「何とか飲ませないと」と焦る気持ちが、理由なしに「とにかくこれを飲んで!!」など、押しつけるように飲ませる行動に走ってしまう場合もあります。毎日の服薬場面での互いのストレスが、けんかになることもあります。このため、場合によっては介護サービスなどをしばらく利用して、訪問看護師や訪問薬剤師などにその都度理由を説明してもらいながら薬を飲む習慣をつけるなど、上手な進め方を見つけられるとスムーズに服薬できるようになることもあります。

他に服薬を拒否する理由としては、過去に薬を飲んだあとにふらついたことがある、副作用が出たことがある、といったことも考えられます。粉末だと、粉が上あごにくっつくのがいやで飲みたくないという人もいます。確かに薬は苦みもありますし、おいしくもありません。

独り暮らしの場合など、服薬管理がどうしてもうまくいかない場合もあります。抱えている病気にもよりますが、医師の指示通りに行かない場合には服薬回数が減らせるものはないか、1日1回にまとめてもらえないか、など本人の状態に合わせた内服の仕方を考える必要もあります。2日に1回のデイサービスの利用時に服用することから始めるといった方法もあります。医師や看護師、福祉職にも相談してみましょう。

最後に、私が関わっていたグループホームの利用者のケースを紹介したいと思います。その方は、食事を食べ終わると自分で下膳して、自分からスタッフに薬をもらいに行くという習慣がありました。このため、代わりにスタッフが食器を下膳してしまうと、薬を渡しても「さっき飲んだのになぜまた飲むんだ」と言って拒否するのです。つまりその方は内服を含めた食事のルーティンがあり、その通りだとスムーズに飲めて、ルーティンから外れると飲めなくなるというケースでした。
本人の性格や習慣などもふまえて、服薬を拒否する理由や飲ませ方をぜひ考えてみてください。

【まとめ】服薬を拒否されるときには? 

  • 本人の性格、経験などをふまえて、拒否する理由を考える
  • 医師から服薬の必要性を説明してもらう
  • うまくいかないときには医師や薬剤師に相談して手段を考える

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