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苦手な義兄(82)を、なりゆきで介護することに。苦痛です【お悩み相談室】

認知症の義兄の介護をしたくない女性

居宅介護支援(ケアマネジャー)の市川裕太さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.近所に住む義姉が亡くなり、その夫(82歳)が一人暮らしなのですが、初期の認知症と診断されました。義姉夫婦の子どもたちは遠方に住んでいるので、なりゆきで私が病院の送り迎えをしたり、様子を見に行って家事を手伝ったりして、面倒を見ています。私たち夫婦も高齢ですし、もともと義兄のことが苦手だったので、このまま介護が続いていくのかと思うと苦痛です。(75歳・女性)

A.お義兄様は初期の認知症ですが、今後進行して相談者の介護の負担が増えることを考えると、早くからできるだけ環境を整えておくことが必要だと思います。義姉夫婦には遠方に住んでいるお子様がいるとのことですが、お義兄様の現状を理解できていないかもしれません。まずはお子様たちにお義兄様の現状を伝えると同時に、家族内における役割分担がどこまで可能か、介護保険サービスを含めて第三者のサポートが必要かといったことを話しましょう。一人暮らしのため、財産等の管理も必要になる可能性があります。相談者にはご自分の生活があるので、全面的にはサポートできないこともお子様たちには理解してもらう必要があります。

介護保険の要介護認定の申請は行っていますでしょうか。介護認定を受けられれば、介護度に応じたサービスで生活のサポートを受けることが可能です。現在相談者が担っている通院の同行、家事の援助などは、介護保険の対象になります。また、財産の管理は「成年後見制度」を利用できる可能性もあります。環境を整えることで相談者にできるだけ負担をかけることなく、お義兄様が一人暮らしを続けることも可能かもしれません。まだ初期なので、住宅型の有料老人ホームなどに入居するという選択肢もあり、そうなると24時間見守りの下での生活もできます。

早期に必要な治療を受け、さらには介護保険サービスなどを利用して専門職が介入することで、認知症の進行を遅らせることと安心できる生活を送ることが可能になる場合もあるのです。こうした認知症になってからの進行状態や経過に伴う医療・介護・地域生活での流れについて、各市区町村で「認知症ケアパス」(手引き)というものが作られています。周囲もどうしていいかわからない不安、この先どうなるの? どうすればいいの? といった疑問に対して時系列で必要なことが記載されているので、お住まいの市区町村の介護保険に関する窓口や地域包括支援センターなどで聞いてみてください。

最後に、そうした状況であっても大切に考えなければならないことは、お義兄様の気持ちです。まだ一人で生活できるからサポートを受けなくても大丈夫、と思っているかもしれませんし、家族以外の人にサポートしてもらうことを受け入れられないかもしれません。お義兄様が現状どんな思いで暮らしているのかを確認してみましょう。ご本人が他者を拒み、上手く第三者につながらない場合もありますが、急に他者が介入するため、構えてしまうのは当然です。その上でご本人の意思を尊重しながら、家族の負担も考慮し、一緒にどうすればいいのか考えられる専門職のサポートに期待をかけたいものです。

【まとめ】認知症になった義兄の介護を、できればしたくないときは

  • 義兄の状況を子どもたちに話して、全面的にはサポートできないことを伝える
  • 子どもたちと一緒に地域包括支援センターに行く
  • 大切なのは義兄自身の気持ちを確認することだと考える

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