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何カ所も通ったが…父に合うデイサービスをどう探す?【お悩み相談室】

孤独な高齢者のイメージ

デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の父(80歳)と暮らしています。これまで何カ所もデイサービスに通ったのですが、どこも「つまらない」「自分には合わない」「行く必要がない」などと言って行きたがりません。父が大好きな麻雀やカラオケができるデイサービスを見つけて、ここなら楽しめるだろうと思ったのですが、やはりだめでした。日中は父を一人にしてしまうことが多いので通ってもらいたいのですが、どうしたら父に合うデイサービスを見つけられるでしょうか?(49歳・女性)

A.私は仕事柄、地域で開催される介護の勉強会などに呼んでいただくことも多いのですが、同様の悩みを持っているご家庭に多く出会います。特に介護サービス導入時には、よくあることです。ご家族としてはできるだけ元気でいて欲しいという願いがありますから、家にいて独りで過ごすよりも、定期的に外出して身体機能の維持・向上、認知症の進行予防など、さまざまな機会を持ってもらいたいと思うでしょう。
そんなご家族の思いとは裏腹に、いろいろと提案してもなかなか応じてくれない様子は、「頑固」「わがまま」に見えてしまうかもしれません。
しかし、ご本人としても、新しい環境に飛び込むことになりますから、知らないところで知らない人たちと改めて関わって……と考えたとき、そこに抵抗感が生まれるのは当然といえば当然です。

私が運営するデイサービスのご利用者で、カラオケ好きの方がいらっしゃいました。
カラオケのできるデイサービスを勧められ、ご本人も「そこなら行く」と言ったものの、1カ月もしないうちに「行かない」と言い出したそうです。
ご家族も「『そこなら行く』と言ったでしょ!」とデイサービスが定着しないことに苛立っているようでしたが、実際にデイサービスでの様子を見て、理由がわかったようでした。
「カラオケが好き」といっても、ただ歌うことが好きというわけではなかったようです。現役だったころ、会社の新年会や忘年会などの場で得意な歌を披露すると、みんなが手拍子をしながら聞いてくれて、歌唱力に拍手が湧き、その場が盛り上がる。だからカラオケに行くと楽しい時間が過ごせるのです。
得意だということは、自分だけでは完結しません。称賛を受け、褒められ、期待に応えることで、得意だと実感できます。
自分のために歌うのではなく、他者のために歌うという要素も大きいと思うのです。他者のためにしてあげることは「人に喜んでもらえた」といった実感を伴うものですから、ケアの中でも大切にしていく部分となります。

また、大きな会社の社長だった利用者の方もいました。さすがは社長、口数は少ないのですが、周囲をよく見ています。ほかのご利用者が判断に迷っていたり、スタッフが相談したりすると、いろいろとアドバイスをしてくれます。デイサービスでの活動に積極的に取り組む方ではなかったので、楽しんでもらえていないのではないかと心配していましたが、奥様に聞いてみると、「あそこは自分が行かないとまとまらないんだよ」と話しているとのことでした。具体的に自分が何をしたのかは忘れてしまっても、自分が行かないとだめだという感覚はしっかりと残っていて、それがデイサービスに通う理由になっていたわけです。

まずはお父さんがどのように過ごせると居心地よく感じられるのか、そこを自分の居場所だと思えるのか、あらためて確認してみてはいかがでしょう。娘さんに負担がかかることは重々承知の上で提案させていただきますが、一度覚悟を決めて地域のデイサービスをできるだけ多く、ご自分で見学してはいかがでしょうか? ケアマネジャーが、いくつか提案してくれると思いますが、お父さんのことを本当に理解しているのはご家族です。またケアマネジャーも地域のデイサービスすべてを熟知しているわけではないこともあります。地域で探すのであれば1日3、4件は見学できると思うので、「この日はお父さんに合うデイサービスを見つけるためにがんばる」と覚悟を決めてみてはいかがでしょうか?

大変だとは思いますが、これからもお父さんのデイサービス問題で悩み続けるかもしれないことを考えると、結果的にはご家族の負担が減ることにつながると思います。

【まとめ】父に合うデイサービスを見つけるためには

  • お父さんはどんなふうに過ごせると居心地よく感じられるのか、自分の居場所だと思えるのかを考える
  • ケアマネジャーだけに頼らず、自分でできるだけ多くのデイサービスを見学する

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