介護ストレスで脳みそつるつる?闘う相手は家族じゃない これって介護の裏技?
青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……?専門家に解説してもらいました。
余裕がなくなると、みんなが自分の努力を主張しだす
じーちゃんが亡くなってから、ばーちゃんの認知症は一気に悪化したように見えました。しかし、お葬式で疲れて家に帰ってきたところで私たちも疲労はたまりまくり、精神的に追い詰められて余計にイライラ。
険悪な空気になると、ばーちゃんがより不穏な空気を感じ取って暴走するという悪循環に陥ります。
そしてそうなると、誰か必ず「私はこれだけ(介護を)やってるのに!」
「〇〇は全然やって(手伝って)くれないじゃない!」と自分の努力を主張し始めるのです。
その内容はさまざまで、たとえば「自分は週に〇回、何時間介護に費やしている」「遠距離だから、仕事で疲れ切った後でも車を飛ばして実家に向かっている」……など。
叔母夫婦とわたしの両親の計4人で言い争いが始まり、わたしはハラハラしながら状況を見守り続けていました。
介護はいくら頑張っても誰かに褒められる機会はあまりありません。そして余裕がなくなると、みんな自分の努力をより主張し合うようになります。住んでいる距離や仕事の内容、勤務時間、得意不得意など、関わり方は人によって違うはずのに、「私はこれだけやっている。あの人はどのくらいやっているの?」と、自分だけの物差しで相手を測ろうとしてしまうのです。
「結婚前から気に食わなかった!」
「子どものころからそういう性格嫌いだった!」
この言い争いをどう止めようかと考えていると、叔母や母が思いもよらぬ“口撃”をはじめました。
「もう!昔からそういうところが嫌いだったのよ!」
「あんたこそ結婚前のあのときにこんな文句を言ったわよね!まだ覚えてるんだからね!」
「お兄さんだって、結婚前から『もっと頻繁に顔を出す』って言っていたくせに」
……お?
「それならあんたんちの子どもたち(ゆずこのいとこ)なんか全然顔を見せないじゃない!」
「おねえちゃんちだって!ウチは〇回来てるし」
ちょっとまって。
「自分はこれだけやってる!」の主張が、余裕がなくなると結婚前(35年以上前)のケンカやトラブル、さらには孫たちが何回ばーちゃんちに来たかということまで主張し始め、火種がどんどん手に負えないほど広がっていくじゃありませんか……!
こうして罵りあっている間に放置されるばーちゃん。本末転倒もいいところです。
家族の足並みをそろえたり、ストレスを抱え込まないようにと家族の大半のグチを聞きまくったり、何かと立ち回ってきたゆずこ。これまでいわばクッション役をかって出てきたわけですが、もういい加減にしてください貴様たち。
そういえばここ最近、突然気を失いそうになる激しい頭痛に見舞われたり、予兆もなくいきなり吐き気に襲われたりと、わたしの体は何かと絶不調だっけ。
いくら病院にいっても、「原因はストレスですね」しか言われないし、心身ともにもう我慢の限界!
その後、なんとか腹を割って本音で徹底的に話し合いました。結果的には、雨が降っても地が固まりだしたので良かったですが、一歩間違えれば空中分解していた可能性も十分にあります。
怖っ。でもこれが現実です。
無理なことはムリ!「なんとかできるかも」は禁物!
あわや取り返しのつかない状態になってしまうところでした……。しかし、認知症になっても安心して暮らせる社会の実現を目指す、『認知症の人と家族の会』東京都支部代表の大野教子さんの元にも、今回の青山家のトラブルと似たような事例が多く集まるといいます。
「家族関係の調整役はすごく疲れますよね。介護のいざこざやストレスが、大昔の火種を再燃させてしまうというのも珍しくありません。そのように揉めないためにも、まずは家族で『自分たちができることとできないことを明確にしておく』ことが大切です。ポイントは。絶対に無理をしないこと。『ちょっと無理をすれば大丈夫』ということも、介護が進むにつれて余裕がなくなってしまうと、どんどん大きな負担になってしまいます」
わたしも心身ともに余裕がなくなってくると、「これくらい大丈夫だろう!」という少しの無理が、最終的に“倒れる寸前まで自分を追い込む原因”になっていました……。
「介護者同士の話し合いの際に重要なのは、私情を一切はさまずに現状を共有すること。一緒にいる場で客観的な事実を伝えたり、お互いに目を見て対策を話し合ってみてください。ムリは禁物!を心掛けてお互いに話し合えれば、逆に『これまで疎遠だった兄弟仲が、両親の介護をきっかけに頻繁に話し合い、絆が深まった』という方もいるんです」
話が白熱するとその場で決めたことも、あとで「何をどう決めたっけ?」と記憶が曖昧になってしまうこともあります。そこで、口頭だけで役割分担を決めるのではなく、スマホやメール、メモにでもちょっと書き記しておいてもいいかもしれません。家族で共有して、納得する。これなら万が一余裕がなくなったときでも、「言った言わない論争」が起きずに済むかも知れませんね。
- 大野教子(おおの・きょうこ)さん
- 『認知症の人と家族の会』東京都支部代表。1995年から4年間、認知症の義母を在宅介護(その後18年間遠距離介護)し、およそ3年前に看取る。1999年に同会の東京都支部の世話人と電話相談員を務める。2011年、支部代表となる。