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パジャマ姿で帰宅する母 ケアを受けているのでしょうか【お悩み相談室】

たたまれた洋服のイメージ

デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(82歳)と二人暮らしなのですが、私の仕事の都合で月に1回程度2泊のショートステイを利用しています。着替えを持たせているのですが、着替えをした様子がなく、パジャマで帰ってくることもあります。面倒をみてもらっているので、こちらの要望は言いにくいのですが、どのように伝えるのがいいでしょうか(55歳・女性)

A.着替えを持たせているのに着替えた様子がないというのは、単に着替えの問題だけではなく、ショートステイの期間中にお母さんがしっかりとケアを受けていたのか、と不安になってしまいますよね。ご家族はサービス利用中の様子を見守ることはできず、帰宅時や迎えに行った際のお母さんの様子からしか判断できないわけですから、心配になってしまうのもうなずけます。
娘さんとしても、着替えさえさせてくれればよいと思っているわけではないと思うのです。
ショートステイという普段との環境の変化やお母さんの不安などの心理に寄り添って、お母さんが安心して過ごせるよう、支援してもらえたのかが知りたいのではないでしょうか。
もちろん、パジャマでもよいとは思いませんが、着替えができていなかったとしても、身だしなみに十分気遣いが感じられ、お母さんが穏やかな状態で帰宅されれば、娘さんも安心できたのではないかと思います。

着替えについては、ケアマネジャーや施設担当者に「着替えさせてほしい」と伝えれば、施設のほうでも配慮してくれるはずです。
ただし、お母さんも認知症ということですから、着替えの必要性が理解できず、拒んだり、望まなかったりといったこともあるかもしれません。
私が運営するデイサービスでも身だしなみを整えるように努めていますが、スタッフとご利用者の関係が浅いうちは特に、スムーズにケアを提供できないことはあります。ご自宅にお送りする際は、できるだけ落ち着いた状態でお帰りいただきたいと思うと、やってあげたいこと、しておきたいことを無理強いせず、ご本人の状態を優先することもあります。
もちろん、ご家族にはうまく支援できなかったこと、不十分になってしまったことをお詫びしています。
パジャマのままだったということについても、ご家族の希望を理解していること、うまく支援できなかったことについて説明があれば、娘さんも不満や不信感を抱くまでにはならなかったと思います。

ケアマネジャーや施設担当者への要望の伝え方としては、「何をどうしてほしい」といった‶具体的な指示や要望″ではなく、「本人にどんなふうに過ごしてほしいのか」といった‶抽象的な介護コンセプト″を意識してみてはどうでしょう。たとえば、娘さんの介護コンセプトが「もともと明るいお母さんだったから、認知症になっても機嫌よく楽しく過ごしてほしい」ということであれば、楽しい気持ちを損なわせてまで着替える必要はないのかもしれません。ほかに「お母さんは本来、きれい好きでオシャレな人だから、服装には気をつかってほしい」ということであれば、スタッフもスムーズに着替える方法を考えてくれると思います。着替えが難しくても帰るときには、きれいな上着だけでも着ることができれば、コンセプトにできる限り沿った支援となるわけです。

ぜひ介護コンセプトを含めて、ケアマネジャーなどの専門職に伝えてみてください。サービスを提供する側も1つのことにとらわれ過ぎずに、コンセプトに沿った自由な提案をしやすくなると思います。ご家族にとってもそれが、介護保険サービスを上手に使いこなすコツだと思います。

【まとめ】着替えさせてくれないショートステイに不満があるときは

  • お母さんにどのように過ごしてほしいのか、介護コンセプトを考える
  • 介護コンセプトをケアマネジャーなどの専門職に伝える

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