介護娘の夜のお出かけ ミルクカレーに託す思い 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。仕事という名の友との時間。乾杯とおしゃべりが生む背徳感が、笑顔をつくります。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
母の介護をすることになって、体力と気力を温存するために、できるだけ規則正しい生活を心がけた。実家に帰ったばかりのころは、飲み屋の喧騒が狂おしいほど恋しくなったのをよく覚えている。夜間に母を見守り、話し相手になってくれる人を雇おうかと思ってサイトを検索したことがあるが、これならと思えるほどのサービスがなく、夜遊びのために余計な出費をするのも、おかしいような気がしてあきらめた。
夜の予定は自然に減っていってしまったが、ときどきは友達が横浜あたりまできてくれ、飲みに行くこともあった。デイサービスから帰宅する母を待ち構えて、夕食を食べさせてから家を抜け出す作戦だ。そういう日のメニューは母が好きなカレーに限る。玄関を開けてカレーの匂いがするだけで喜んでくれるからだ。「もう先に食べてしまったからどうぞ」と嘘をついて、母にカレーを出す。食べ終わったらすぐに器とスプーンを洗う。トイレと歯磨きを済ませて薬も飲ませる。「仕事で出かけてくるね」と、もう1度嘘をつく。数時間の息抜きをして帰宅し、母とふたりの時間に戻った。
鶏肉とじゃがいものミルクカレースープ
カレーとシチューの間のような、まろやかで食べやすい味のカレーです。辛口のスパイシーなカレーは味を濃く感じてしまうのか、母にはミルクカレーのほうが好評でした。じゃがいもの角が丸くなるくらいやわらかく煮ると、さらに口当たりがやさしくなります。
材料 2人分
鶏もも肉 180g
玉ねぎ 1/2個
じゃがいも 1個(120g)
にんじん 1本(85g)
カレールウ 1かけ
牛乳 100ml
サラダ油 大さじ1
作り方
- 鶏肉は食べやすい大きさに切る。玉ねぎはみじん切り、じゃがいもは一口大、にんじんは小さめの乱切りにする
- 鍋にサラダ油を入れて熱し、玉ねぎを炒める。玉ねぎが透明になってきたらじゃがいも、にんじんを加えて炒め合わせる
- 水400mlを加えて煮立ったら弱火にし、少しずらしてふたをして、じゃがいもがやわらかくなるまで15分ほど煮て火を止める
- カレールウを加えて混ぜ溶かし、牛乳を加えて再び火をつけ、弱火で5分ほど煮て火を止め、器に盛る