食事拒否、介助の手も振り払う義母。食べてもらうには【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.2年前に認知症と診断された義母(79歳)と同居しています。最近食事を拒否することが多く、全く食べないことがあります。口もとに運んで食べさせようとしますが、手を振り払われてしまいます。どうしたら食べてくれるでしょうか(50歳・女性)
A.お義母さんは、食べるための動作は保たれているのに食べようとしないということであれば、まずは身体的な問題がないかどうか、調べてみるのが先決だと思います。認知症の人は、体の不調や不快感があっても、それをわかりやすく他者に訴えることができなくなっていることもあります。
私が運営するデイサービスのご利用者で、徐々に食事の量が減り、水分しかとらなくなってしまった方がいました。食事を勧めても嫌がり、食事介助も試みましたが、しまいには怒りだしてしまうのです。体重の減少も見られましたし、活気がない様子も増えてきましたので、受診して原因を探りたいと考えました。けれどもそれも頑なに拒むので、なかなかうまくはいきませんでした。デイサービスでもとにかく何か食べてもらおうと、ご本人の好物を用意したり、食べやすい大きさや形状にしたり、いろいろ考えて試してみるのですが、やはり思うような成果は得られず。時間がかかってしまいましたが、どうにかご本人にわかってもらい、検査を受けました。すると食道に大きな腫瘍が見つかり、この腫瘍によって、飲み込みづらさや痛みを感じていたようだということがわかったのです。
食べようとしない原因はいろいろあります。消化器系、嚥下機能、歯科、味覚など、何かしらの問題が生じているのは確かだと思うので、まずは主治医の先生に相談してみるといいでしょう。身体的な問題が原因だったとすれば、自然と食べられるようになっていくことも期待できると思います。
身体的な問題以外では、ほかのご利用者で「気持ちづくり」が効果的だったケースもありました。アプローチの仕方は食事の環境や背景などによってそれぞれですが、何かしら食事前の作業に関わって匂いや調理の音など、感覚を刺激されることが、食べる意欲に結びつくと思います。例えば、献立を一緒に考える、買い物に一緒に行く、食材の下ごしらえを手伝ってもらう、食器を並べてもらうなど、少しでも食事づくりに関わってもらうと、自然な流れで食事ができるかもしれません。
ご利用者の中には、初めのうちは「迷惑をかけるばかりで申し訳ない」と感じているのか、自分の暮らしに対して受け身になってしまう傾向がある方もいます。その場合は、食事そのものを工夫するというよりは、まずは生活の中での役割や楽しみを見つけてもらうようなアプローチも効果的だと思います。誰かと一緒に何かをする楽しみを見つけられれば、自然と食事への意欲につながるのではないでしょうか。
【まとめ】食事を拒否する義母に食べてもらうには
- 身体的な問題がないかどうか、主治医に相談する
- 食べ物の好みに合わせたり、形状や大きさを工夫したりする
- お義母さんの気持ちづくりを考える