介護の裏ワザ、これってどうよ?

眠れる龍をたたき起こす ありがた迷惑な母の電話 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

「見つけたよこの小銭泥棒が! 毎日こりないやつだねぇ!」「寝れないぃぃぃぃぃぃぃぃ」10分に一度の襲撃!

布団や衣類没収、ドアを叩きまくるetc. ほぼ毎晩、襲われる孫

「ドンドンドンドン!」
けたたましく叩かれ揺れる扉。時は深夜2時。
ばーちゃんの中で、ちょっと気になることや引っかかることがあると火種としてくすぶるのか、昼夜問わずに襲撃してきます。そしてそれは、暴れ疲れるまで延々と続きます。
気付いたら掛け布団や毛布を奪われ、凍えるような寒さで目覚めても、耐える。
突然「ウナギ泥棒だ!」「返せ私のウナギ!」と怒鳴り込まれても、とにかく耐える。
対処として「深夜に『おまえ誰だ』認知症のばーちゃんを女子会ノリでもてなす」という方法でなんとか乗り越えてきましたが、さすがに毎晩はわたしの体力がもちません。

というか、ほぼ10分から15分に一度部屋に乗り込まれるという驚異のペースなので、常に睡眠不足状態。目の下には黒々としたクマができて、日中も脳みそに分厚い膜が張っているようなボ~っとした状態が続くこともありました。
ばーちゃんが暴れた後は必ず腰が抜けて、痛くて立てないくらいの状態になったり、吐き気がひどくてほとんど食事が口にできない状態にもなりました。
今思うと、なんとか自分一人で対応しようとしていたのでしょう。それはプライドなのか、「自分はこんなことじゃ負けない」と言い聞かせていたような気もします。

本当はここまでの状態になる前に、ショートステイやデーサービス、施設への入所など介護サービスに繋げた方がいいに決まっています。でも我が家の場合はばーちゃんの拒否がかなりひどく、当時のケアマネさんもお手上げ状態でした。
そしてやっとばーちゃんが寝静まったころ、わたしは母や叔母に、状況報告もかねたグチをポロっとこぼしました……。

ゆずこのグチが“より最悪”な事態に!? 体も心もついに悲鳴をあげてしまう

母や叔母は交代制で来ていたのですが、わたしがそこまで迫害されていることは知りませんでした。そしてアプリのLINE(グループライン)や電話で現状を打ち明けた途端、ものすごい勢いで、
母「なにそれ!?お母さんがばーちゃんを説教するから、ちょっと待ってて!」
叔母「ゆずこ本当にごめん。私がひとこと言ってみる!」
というような内容が返ってきました。
いや、ちょっとまって、今やっと寝たのに起きちゃ……。
「プルルルルルルルル! プルルルルルルルル!」
我が子や姪っ子を思っての行動なのですが、そのタイミングがばーちゃんがやっと寝静まったころなのです。

けたたましく鳴る電話の音に、むくりと起き上がるばーちゃん。電話口で母や叔母の説教が始まります。これが遠距離介護と現場の温度差というか、難しさなのでしょう。電話で刺激され、またそれが“火種”となってゆずこの部屋を何度も何度も襲撃し始めるのです。

闇をつんざく着信音・・・再び龍が目を覚ます・・・!

電話で話すなら、お説教より聞き役に徹すること 役割分担で負担を減らして

この、母たちの「よかれと思った」行動が裏目に出てしまった今回のトラブル。一体どうすれば改善できたのか。認知症になっても安心して暮らせる社会の実現を目指す、『認知症の人と家族の会』東京都支部代表の大野数子さんにお話を聞きました。

「私も血管性認知症の義母の在宅介護に4年間携わってきました。だからこそゆずこさんの葛藤というか、お気持ちはすごく分かります。でも、『なんとか自分ひとりで対応しよう』というのは絶対ダメです。ゆずこさんは立ちまわり方や視点を変えてとてもいい介護をしていると思うのですが、時々ご自身がいっぱいいっぱいになったり、追い詰められることもありますよね。
今回の電話にまつわるトラブルですが、お母さまや叔母さんが遠距離介護なら、電話でも役割分担ができればよかったですね。例えばおばあさんにお説教するのではなく、とにかく相手の話を聞く、聞き役に徹するというスタンスの方がよかったと思います。言葉でねじ伏せようとしたり、お説教をしたりしたところで相手の感情を刺激するだけです。
そうではなくて、昔話やおばあさんの好きなものの話など、あたり障りなく気分や空気感がガラリと変わるように“場面を変えてあげる”ことも大切です。それに、一番近くにいて何かと当たりが厳しい主介護者よりも、ちょっと距離があるほうが聞き役に徹することができるので適役なんです。
ほかには、落ち着いてもらうために夜中であっても何か相手の好物をつまみながらお茶を一緒に飲む、というのもいいと思います。それもゆずこさんおひとりで何とかしようとはせずに、うまく役割分担と場面を変えることを意識してみてください」

そうですね。母や叔母のお説教電話が火種になることが分かってからは、グチる際に「電話をしてくれるなら、ばーちゃんを刺激しないように世間話程度にしてくれると嬉しいな」と一言付け足すようになりました。その結果、ゆずこの睡眠時間はちょっとずつ増えていったという……。
決して無理をせず、周り(身内や介護サービス)を上手に使う。まだまだ至らないところだらけのゆずこの教訓になりました。

大野教子さん
「認知症の人と家族の会」東京都支部代表。1995年から4年間、認知症の義母を在宅介護(その後18年間遠距離介護)し、およそ3年前に看取る。1999年に同会の東京都支部の世話人と電話相談員を務める。2011年、支部代表となる。

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