お悩み相談室

認知症のせいとわかっていても同じ質問にイライラ、つい…【お悩み相談室】

  • デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.同居している母(85歳)が一年前に認知症と診断されました。1日に何度も何度も同じことを聞かれ、困っていたのでネットで調べたら、責めずに、「毎回きちんと答えてあげる」というような対処法が出ていたので実践しました。けれども次第に疲れがたまって結局はイライラして無視したり、「何回言えば気がすむの!」などと怒ったりしてしまい、自己嫌悪に陥ります(50歳・女性)

A.確かに「毎回きちんと答えてあげる」というのは、同じことをくり返し聞いてくる認知症の人に対する基本的な対応です。しかしそれができずにイライラしてしまったり、怒ったりしてしまっても自分を責めないでください。介護の専門職である私でも、何回も聞かれると心が折れそうになることはあります。家族なのですから、例え怒ってしまったとしても、修復することができます。今までと少し関係性が変わってしまったと感じても、あまり心配し過ぎないというのも大切なことだと思います。私もご利用者のご家族から同様の話を聞くことは多いのですが、あるご家族はつい怒鳴ってしまって本人に悲しい顔をさせてしまったときは、本人の好物を一緒に食べる時間を作るとおっしゃっていました。関係を修復するための時間をつくることで、ご家族も自分を責めずにすむかもしれません。

そもそもなぜ、「毎回きちんと答えてあげる」必要があるのでしょうか。何度も同じことを聞くのは

  1. わからないことや確認したいことがある
  2. 確認する
  3. 忘れてしまう
  4. 確認する

という流れになります。聞かれる側からすると、4.は2.のくり返し、もしくは2.と3.のくり返しに思えますが、本人にとっては2.の返答そのものがなかったことになるので、1.を「聞いただけでいきなり怒られた」ような状況に感じるはずです。子どものころ、兄弟などのいたずらを自分の仕業と親から誤解され、いきなり叱られたというような経験がある人は多いと思います。このように認知症の人から見れば、まさに理不尽な体験でしかないわけです。

「3.忘れてしまう」は認知症によるものですから、言って聞かせても意味がありません。「2.確認する」がくり返されるのは、1.の「わからないことや確認したいこと」が残っているからです。つまり、2.に対する返答以外にも1.の「わからないことや確認したいこと」を解消できる方法があれば、何度も同じことを聞かずに済むのかもしれません。私が運営するデイサービスに「何時に帰るの?」と何度も聞いてくる利用者の女性がいました。なぜそんなに帰る時間を気にするのかと思ったら、目の前に座っていたほかの利用者の男性から怒られたことが原因だったようです。その男性と少し距離をとるだけで、「何時に帰るの?」とは聞かなくなりました。1.の背景には、物事がはっきりしないことや見通しがつかないことの不安があり、2.はそれを解決するために、欠けたピースを埋めるようなことだと思うのです。ピースが欠けていなければ、不安は生じないと言えます。

またある利用者のご家庭では、お嫁さんが認知症の義母から「夕飯なにかしら?」と何度も聞かれてイライラされていました。そこで「今日の献立表」を用意し、「お母さん、今日の夕飯はハンバーグにするから、献立表に“ハンバーグ”って書いておいてください」と仕事を頼むことで、くり返し聞いてくることはなくなったそうです。その後、自分から「今日のお夕飯は何にしようか?」と相談してくるようになり、簡単な作業も手伝ってもらえるようになっていきました。

認知症になっても感動をともなった記憶は何かしらの形で残ると言われています。“書く”という印象に残るような作業に加え、役割をもつこと、夕飯のメニューについて心配や不安がなくなったことで、くり返し聞かなくなったのかもしれません。

なぜ1.について、そんなに気にしているのか、原因を考えつつ対応の工夫することで、こうした症状をなくすことは可能です。考えて工夫して対応した結果、うまくいった成功体験があると、ほかの症状でも応用がきくものです。
お母さまのため、負担の少ない介護のため、ケアの工夫をキャッチボールできるといいですね。

【まとめ】認知症の母に何度も同じことを聞かれてイライラする

  • 家族は関係を修復できる。イライラする自分を責めない
  • なぜ質問内容について気にしているのか、考えて対応する

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について