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介護の裏ワザ、これってどうよ?

認知症になったらペットは誰が?猫もボケる?これって介護の裏技?番外編

※今回は『介護の裏ワザ、これってどうよ?』の番外編です

青山ゆずこです! 認知症のじーちゃんとばーちゃんの介護に携わり、およそ7年の月日を経て最期を見送りました。現在は、3人で暮らしていた築50年の一軒家でゆずこだけが生活を続けています。
ある日突然、まさかの同居人が転がり込んできたことから、ふと疑問が浮かびました――認知症になったらペットはどうすんの?

ちょっと待って・・・猫飼ったことないのに生まれたてとかラスボス級ぞ・・・!

「突然庭に産み落とされた!」独身ゆずこ、怒涛の“育児”

それは、わたしが原稿の締め切りに追われて自宅に缶詰めになっていた大雨の日のこと。
机の目の前にある窓越しに、唸るようなドスのきいた猫の声が聞こえたと思ったら、しばらくすると今度は「ミィ~ミィ~」と子猫の鳴き声が聞こえてきました。そう! 野良猫が赤ちゃんをうんだのです。鳴き声は1時間以上続きましたが、雨に打たれているせいかどんどん弱々しくなります。様子を見にいくと親ネコはおらず、一匹の子猫だけが死にそうになっていました。思わず子猫を保護し、即動物病院へ。へその緒を処理してもらったり、泥を落として保温してもらったり、できる限りの処置をして、子猫はゆずこ家の一員になったのでした。

ちょっと待って・・・猫飼ったことないのに生まれたてとかラスボス級ぞ・・・!
生後2~3週間後。やっと猫らしい形になってきたものの、うんちがまったく出ずに震えだしたため、車で1時間かけて夜間緊急病院に連れいった母・ゆずこ。

ミルクやトイレは1時間半おき。育児(?)で満身創痍になりながらも、生まれて初めての猫との暮らしを満喫していました。もし、じーちゃんとばーちゃんが生きていたら、この子を見てなんて思うだろう。ばーちゃんはきっと「猫は爪を研ぐから家が傷つく!」って言うだろうけど、こっそりとご飯やおやつをあげて、可愛がってくれるようなタイプのはず。ツンデレが過ぎるというか、結構なんだかんだで優しいんですよ、ばーちゃんは。

「わたしが倒れたらこの子はどうなるんだろう……」 一人暮らしがゆえの、ペットへの不安

そんなことを考えながらニヤニヤしていると、急に不安が浮かんできたのです。
それは「わたしが年を重ねたこの先、もし認知症や病気になってしまったらそのとき飼っているペットはどうなるの?」ということ。ほかにも……
●もし実家にいる親が両親とも認知症になったら、ペットの面倒は誰が見るの?
●親が施設に入居(もしくは入院)することになった。じゃあペットは?
本人のみならず、家族も決して他人事ではありません。

「私が病気になったり、飼えなくなったらこの子は・・・? 可愛いだけじゃ済まない問題だぞ・・・!」

ケアマネジャーや施設職員として介護業界で活躍し、ペットケアアドバイザーとして高齢者とペットの問題にも精通する、倉田美幸さんにお話しを聞きました。

倉田美幸さん
倉田美幸(くらた・みゆき)さん
認定特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協会理事。ケアマネジャーとして高齢者と介護関係者と係わりながら、ペットに関する問題にも携わる。愛犬の整体院・ホームステイ型ペットホテル『パルドッグケアサポートアーリン』を運営。セミナーや勉強会なども行っている。

「これまで、高齢の飼い主さんが筋力低下や病気、認知症などになり、体の自由がきかずペットのごはんも満足に与えられない、トイレや散歩の管理ができないという現場を実際に見てきました。ご本人では『どこまで飼えるのか』という判断は難しいと思います。問題は、飼えていないのに『自分はきちんとペットの世話ができている』と思っているケースがすごく多いことです」

本人が判断するのは容易ではないからこそ、大切なのは周囲との関係性と準備であると倉田さんは話します。

「まず大切なのは、普段からご近所の方たちとコミュニケーションを取るという飼い主さんの意識です。この問題を高齢者とペットの1対1で考えてしまうから、問題が次々と出てきます。事前に周囲との関係性ができていれば、何かあったときに『体がつらいなら代わりに散歩行きますよ』『預かろうか?』と、声を掛け合うこともできるはずです」

確かに、日頃からご近所の方々と交流があれば、いざというときに凄く心強い存在になってもらえます。「ペットを飼えなくなってしまった」=「保健所に連れていくしかない(その多くは殺処分)」と直結せずに済むかもしれません。

そのほか動物愛護団体などに引き取ってもらうケースもありますが、倉田さんいわく「安直に『飼えなくなったら愛護団体が何とかしてくれる』と思っている人も多い」とのこと。そうですよね。活動を最初からあてにするのはよろしくない気がします。

「動物愛護団体の多くは飽和状態。無責任に受け皿にしてはいけないと思います。まず一番に考えたいのは、自分で飼えなくなる前に、個人や老犬老猫ホームなどの法人など、次の飼い主さんや安心してペットを託せる相手を事前に探しておくことです。

その上で次に必要なのが、お金。高齢者が飼うペットも高齢で、若い子にくらべて貰い手は圧倒的に少ないのが現状です。だからこそ事前の準備として、持参金を用意する飼い主さんもいらっしゃいます。ごはん代や大体の病院費用、保険料など、譲渡後の負担額を用意しているのです。飼っているペットに1年間でどれくらいの費用がかかっているのか把握して、ペット預金を始めてもいいでしょう」

また、お金と同時に「その子の情報を記録しておくこと」も、すごく大切だといいます。

「その子の性格や特徴などは、飼い主さんには当たり前のことでも『はじめまして』の人は違います。名前や性別、年齢はもちろん、種類や性格、好きなおやつなど、飼育のアドバイスをペット日記として今のうちから記録してみてください。その情報があるとないとでは大違いです」

また、「旅行などのイベント以外でも、日頃から知人や家族に預けたりして、飼い主以外の人に慣れておくことも大切」と倉田さん。費用面を考えると「ちょっとした用事でわざわざホテルに預けるなんて……」と躊躇してしまいそうですが、そこはいざというときに慌てないためにも、普段から慣れが必要とのこと。数時間単位で安いお値段で預かってくれるサービスもあるので、飼い主、ペット共々新しい環境に慣れておくのもいいかもしれません。心がけと準備が重要になるのですね。

ペットも認知症になるって本当!? 原因と予防は?

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カメラ目線でいっちょ前にポーズを決めていますが、この直前にゆずこのノートパソコンのキーボードに吐き散らかしています。しかもその上で飛び跳ねた~。

準備や心がけなど、ペットを飼えなくなった場合の対処法は分かりましたが、ふと思ったのが「犬や猫が認知症になったらどうなるの?」という疑問です。
動物の認知症問題に詳しい、高円寺アニマルクリニックの高崎一哉先生に直撃インタビューしてみました。

高崎一哉先生
高崎一哉(たかさき・かずや)先生
高円寺アニマルクリニック院長。治療だけでなく食事や飼育環境の改善など飼育指導にも積極的に取り組む。特に犬は専門のトレーナーと連携を組み、しつけの指導にも力を入れている。

「ワンちゃん猫ちゃんの認知症の症状としては、散歩コースや飼い主のことを忘れたり、排せつを失敗したり、家の中で徘徊してしまうことなどがあります。昼夜が逆転して夜間にひたすら鳴き続ける子、中には攻撃的になる子もいます。猫ちゃんはワンちゃんほど社会性がないので分かりにくいのですが、早いと8~9歳から、平均でも12歳くらいから認知症が発症します」

そもそも、何をもって「認知症」と診断するのでしょうか?

「落ち着きがない、家の中をうろうろする、という行動が実は甲状腺の病気だったり、食べたことを忘れたかのように極端にごはんを欲しがる行動も糖尿病だったり、という可能性があります。高齢で認知症の症状に当てはまっても、安易に判断してはいけません。認知症以外の病気である可能性を、私たちは検査や聞き取りで一つずつ消していって、総合的に判断します。

原因は何ですか? 予防とかあるのでしょうか。

人とのコミュニケーションが少なく、脳に対する刺激が少ないと発症しやすいといわれています。なので、一緒に遊ぶ時間を毎日とったり、撫でたり声をかけたりを積極的にしてください。また、転がすと中からフードが出てくる“脳トレ”ができるおもちゃで適度に脳に刺激を与えるのもいいですね」

お話を聞いて、さっそくわが家の猫用に「脳トレグッズ」を購入してみました。ちょっと複雑な構造の専用段ボールにおやつのカリカリを入れると、猫があの手この手で頭を使って取り出そうとするのです。格闘すること30分。呼びかけても返事すらしないほど、夢中になってる……すごい。

※青山ゆずこ家のかわいい猫写真特集はこちら

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