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東京で働く女性が介護離職して実家へ。自分を犠牲にしすぎでは?【お悩み相談室】

パソコンの使い方を聞く女性のイメージ

デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.ケアマネジャーをしていますが、担当している認知症の女性(70歳)の夫が他界しました。一人暮らしになってしまうので、東京で働いていた独身の娘さん(38歳)が仕事を辞めて実家に戻ってくると言っています。チームを組んで女性を見守ればまだ一人暮らしを続けられると思いますし、娘さんの人生が犠牲になるようで心配です(49歳・女性)

A.私はケアマネジャーの経験がないのですが、業界に長く関わる者として返答させて頂きます。まず、娘さんが実家に戻ると判断されたのなら、娘さんがお母さまの介護をされる事のお手伝いが、ケアマネジャーの仕事ではないでしょうか? 娘さんの仕事事情、お母さまとの関係性、恩や責任についての考え方など、家族としての判断というのもあると思うので、あまり踏み込むとご家族の意向を尊重できないことになりかねません。
娘さんは自分が「介護しなくちゃ!」「親の介護は身内の努め」と考えられているのであれば、介護は社会全体で支えるもの、頼ってもいいと伝えてあげて下さい。

娘さんは、お母さんが一人暮らしを続けていくことになったとき、どのような支援を受けられるのか、地域の専門職がチームでサポートすることで、どんな暮らしになるのか、具体的なイメージができないことで不安に感じているのかもしれません。
娘さんもお母さまの暮らしを支えるチームの一員として、娘さんにはどの部分を担ってもらいたいのかなど、できるだけ具体的に提示することが大切です。例えば「東京にいるときにはなるべく毎日お母さんに電話をかけてもらう」「帰省はどれくらいの頻度ですればいいのか」「帰省した際にはどのようなことをしてほしいのか」といったことを伝えてください。そのうえで判断するのは、娘さんです。

私たち専門職は、心を込めて取り組めば取り組むほど、精一杯尽くせば尽くすほど、実際はさまざまな制約もあり、本当に「大したことをしてあげられない」という実感を抱きます。私も何度となく憤り、今でも歯がゆい思いをしますが、その無力さをわかっているということも私たち専門職の大切な「軸」なのだと思います。無力を実感しているからこそ、真摯に向き合い、ご利用者とご家族に必要な情報提供ができます。ご家族がこれからの暮らしをイメージできるよう、その都度先を見据えた判断がしっかりとできるように十分に配慮して差し上げてください。これだけでも相談者が娘さんを心配していることは伝わるはずです。
これから先のお母さまの暮らしを思うと、娘さんが必要となるのは確かなことだと思います。家族という太い精神的支柱があると、ぎりぎりのところでがんばれるものです。自分のためだけにはがんばれなくても、家族のためならがんばれることがあるからです。
娘さんが如何なる決断をしたとしても、全力でサポートするのが、専門職の役割ではないでしょうか。

【まとめ】母の介護のために仕事を辞めて同居しようとする娘

  • 家族の意向を尊重する
  • お母さんが一人暮らしをする場合、どのような支援があるのか、チームでのサポートによってどのような暮らしになるのかを具体的に提示する
  • 娘の決断を全力でサポートする

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