友、遠方より来たる。いちごパイでおもてなし 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。旧友との時間を華やかにする、赤い果実をパイに載せて。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
ときどき母の友達が3時間近くかけて訪ねてきた。父と母が所属していた大学のサークルの後輩でSさんという。はちみつ、馬油、避難グッズ、粉じんよけのゴーグルなどいろいろなものを届けてくれた。電話がかかってくると、母はSさんに「ひとりで暮らしているからがんばらなくちゃ」と言っていた。今は私と暮らしているので、本当はひとり暮らしではないのだが、きっと父が亡くなった後、母はそうやって自分を奮い立たせてきたのだろうと想像できた。
父の命日が過ぎたころ、Sさんから「新年の挨拶に伺いたい」と電話があった。「毎日寒いのでもう少し暖かくなってからでも」と、私はSさんに言ったが、「1月中には挨拶を」ときっぱりとおっしゃる。
1月終わりにSさんは背広を着てあらわれた。バスに乗ろうとしたら転んで手をケガした、と、左手に包帯を巻いていた。「あなたも気をつけるんだよ」と母のことを気遣う。私はふたりにおやつを用意して、散歩に出かけることにした。ふたりはしばらくどんな時間を過ごしたのだろう。
Sさんは、母が老人ホームに入居してからも何度か面会にきてくれたのだが、最近は音沙汰がない。いまもお元気だろうか。
いちごとあんこのミニパイ
いちごとあんこを組み合わせた小さなおやつです。あんことホイップクリームでパイがしっとり、食べやすくなります。泡立てずみのホイップクリームや、冷凍パイシートを使うことで、手軽に作れます。パイ生地に卵黄を塗って焼くとこんがりと焼き色がつきます。いちごのほか缶詰の黄桃などでも。
材料 2人分
冷凍パイシート 1枚
いちご 小4個
つぶあん 大さじ2強
ホイップクリーム 適量
卵黄 1個分
作り方
- 冷凍パイシートは袋の表示どおり解凍して、4×5cm角に切り、スプーンかハケで卵黄を塗る。
- 天板にオーブンシートを敷いて1を離して並べ、180℃に予熱したオーブンで13分ほど焼き、とり出して冷ます(トースターで焼く場合は、様子を見て表面が焦げそうならアルミホイルをかぶせて焼く)
- パイ生地につぶあんとホイップクリーム、へたを除いて薄切りにしたいちごをのせる