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お悩み相談室

認知症の女性を家族が外に出さない。進行が心配です【お悩み相談室】

手を重ね合う母娘のイメージ

デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.デイサービスのスタッフとして働いています。ある認知症の利用者(80歳・女性)が自宅にいたときに一人で出かけて道に迷ってしまい、ご家族がとても心配されたことがありました。無事に近所の人に保護されて帰宅できたのですが、それ以来ご家族が心配されて週に2回のデイサービス以外は家に閉じ込めている状態なのです。まだまだ元気でしっかりしている部分もあったのですが、最近は会うたびに進行しているようで心配です(38歳・女性)

A.「まだまだ元気でしっかりしている部分もあった」とのことですから、まずは、利用者の運動機能や症状が、閉じ込められる前と後で変化したのか、客観的にモニタリングしてみてはいかがでしょう? たとえ運動機能が低下したり、症状が強く出ていたりしても、それが閉じ込められていることによるものなのかを判断するには、以前の状況との実態的な違いの「差」を見る必要があります。もともと毎日のように外出していたのか、たまにしか出かけていなかったのか。毎日のように外出していた方の運動機能が、家に閉じ込められた以降に低下したのなら、確かにその影響だといえるでしょう。

このように客観的に評価、分析したうえで、明らかに家に閉じ込められたことが原因で認知症が進行していると判断できたら、対応を考えてみましょう。
デイサービスのスタッフとしてできるのは、デイサービスに来る回数を増やすことを家族に提案することです。家族の思いはそれぞれで、「本人の好きなようにさせてあげたい。それで事故にあったなら仕方ない」という覚悟をお持ちの方もいれば、「本人の安全が何よりも大切。そのためにできることをやる」と考える家族もいらっしゃいます。スタッフがその思いに踏み込むことはなかなかできません。また、「ご本人のため」だといっても、家族の負担が増してしまうような提案では思うように解決に進まないかもしれません。

利用者がデイサービスに来たときには、散歩中に信号を守れるか、背後から車や自転車が来たら歩道側によけられるか、転ばずに歩けるかといったことをモニタリングできるといいですね。危険を避ける能力があり、運動機能が保たれていれば、たとえ道に迷っても事故に遭う可能性が低くなります。モニタリングの結果を生かしてデイサービス利用中に外出の機会を作り、スタッフが見守りつつも、ある程度本人の自由に歩いてもらうなどの取り組みによって、デイサービスからご家族にご本人の状態や変化などを情報提供することもできます。そうすればご家族にとっても介護サービスの有効活用につながると思います。

【まとめ】迷子になったのを機に家族が認知症の女性を家に閉じ込める

  • 家に閉じ込められていることが運動機能や症状にどのような影響を及ぼしているのか、客観的に評価・分析する
  • 家族の気持ちには十分に配慮し、家族の負担が増えてしまわないようにアプローチする
  • 機能維持のためにデイサービスの回数を増やすことを家族に提案する

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