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76歳の夫「男と会ったのか」買い物でも浮気を疑います【お悩み相談室】

デイサービスを運営する島田孝一さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.夫(76歳)が2年前に認知症になったのですが、最近浮気を疑われて困っています。買い物に行っただけで「男と会ってきたんだろう」と責めてきたり、新しい洋服を着ていると「誰に買ってもらったんだ」と言い出したりします。先日は「妻が浮気している」と自宅にきた親戚にも話していて、近所の人にでも話されたらと思うと不安です(72歳・女性)

A.精一杯ご主人に尽くされているなかで、浮気を疑われるのは非常につらいですよね。心中お察しいたします。この例では先に別の事例をお伝えした方がわかりやすいかと思います。認知症の人によくみられる症状として、「もの盗られ妄想」と言われるものがあります。お財布などの大事なものを自分でしまったのに、その記憶がないために不安になり、あるはずの場所にない事から、「誰かが盗った」という発想に至るわけですが、その「もの盗られ妄想」の中で、単に「盗られた」では済まず、「お前が盗ったんだろ!」と一番身近な人を犯人にしてしまう事があります。これは、失くしたものをあっけなく発見してみせられたり、泥棒が入ったという一大事に対して軽くあしらわれたりするような対応をされたことで、「自分は大事なものを失くすようなことはしていない」という気持ちから、「誰かのせいにする」という反応として現れます。「浮気をしている」と疑うご主人の場合も奥様のことを頼りにしていて、いなくなったら困るからこそ、「見放されたくない」といったような不安が募って、よからぬ疑いに発展してしまうと考えることができます。

現役で働いていたときは、自分が一家を支えているという自負があったはずです。役を果たしたのち、認知症になると、今まで出来ていたことが出来なくなってくるので、情けなさを感じたとしても無理はありません。「見放されてしまうのではないか」などと不安に感じるのも自然なことです。「してもらうばかりになってしまった」「自分は何もしてあげられない」という思いが背景にあったとすれば、最も信頼している人を疑うという疑心に陥ることもあるでしょう。もの忘れがあれば「一緒に買い物に行っていないのに妻は見覚えのない新しい服を着ている」と思うかもしれません。たったこれだけでも「誰にその洋服を買ってもらったのだろう」という発想になる可能性もあります。自分の中のいろいろな事があやふやな状態で確証がもてないからこそ、妻が楽しそうで、活き活きして見えると、それがよからぬ詮索となって現れるかもしれません。
まずは日常の中で頼りにしたり、相談したり、感謝したりすることを意識してみてください。そうすることで、ご主人の「自分は何もしてあげていない」という思いを軽くしてあげられるかもしれません。「誰に買ってもらったんだ?」と疑心を抱くのではなく、単に認知症の記憶障害による「いつ買ったんだっけ?」という状態になることは十分に考えられます。ご主人は認知症の状態にはなりましたが、すべてを失っているわけではないはずです。今も変わらずにできていること、わかっていることなど、認知症になっても変わらないご主人の姿を探してみてください。

親戚や近所の人から、自分が本当に浮気していると疑われるのではないかということも、心配ですよね。もしその件について聞かれたら「大変なのよ、愛されちゃって」「この年になってどうしてこんなに好かれているのかわからないのよ」くらいの余裕を見せられると、ご主人にも奥様の余裕が伝わるのではないでしょうか。
もし私がご利用者の奥様から同様の相談をされたら、「デイサービスに来ているときも奥さんの話ばかりされていましたよ。愛されてますね。」と言って、ご主人が単に浮気を疑っているだけではないことを伝えると思います。ですから、親戚や近所の人にも認知症についての理解があれば、ご近所から浮気を疑われる心配もなくなります。これを機に親戚や近所の人に認知症について知ってもらうようにしてみませんか? 少し勇気がいるかもしれませんが、今後のご夫婦にとっても、プラスになると思います。

【まとめ】認知症の夫に浮気を疑われる

  • いなくなると困る存在だからこそ、疑われる
  • 日常の中で頼りにしたり、相談したり、感謝したりする
  • 親戚や近所の人に認知症について知ってもらう

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