もめない介護

ヨメトーーク!!義母たちがデイサービスで盛り上がる もめない介護34

コスガ聡一 撮影

医師から強く勧められたこともあって、義父母は比較的早い時期からデイケア通いを始めました。週1回からスタートし、週2回、週3回……と少しずつ回数を増やしています。

義父は囲碁仲間が見つかったこともあり、わりとご機嫌に通ってくれていましたが、義母の気分は上がったり下がったり。
「大勢の人がいて、気を遣って疲れる」
「家で気楽に過ごしたい」
「あれぐらいの体操なら家でもできる」
ふくれっ面で訴えることも少なくありませんでした。

そんなある日、義母がこんなことを言い出しました。

「ひまわりの家のみなさんがね、『おたくはお嫁さんがやさしくていいわね』って言うのよ。そんなこと言われても困るわよねえ……」

ハーッと深いため息をつきながら私をチラチラ見ます。これは、もしかして遠回しに何か不満を伝えようとしている……? 

義母はどちらかといえば、性格はきついほうで、好き嫌いがはっきりしています。観察眼が鋭く、「あの人はこういうところがダメね」といった評価するときは、たいてい的を射ている。意地悪だなと思いながら笑ってしまう。ただ、不満をストレートに伝えることはほとんどなく、陰でこっそり、義父を焚きつけて言わせるという、ちょっと手の込んだことをします。

面倒くさいといえば、面倒くさいのですが、こちらが気づかぬフリの「おとぼけ」作戦で対応していると、ご本人もケロリと忘れてくれたりするという、ありがたい側面もあります。

そこで今回も、義母の真意はわかりませんが、「単なる雑談」として接することに決めました。

嫁の悪口大会は、いつでもどこでも大盛況

「デイのお友達のみなさんと、お嫁さんの話で盛り上がっているんですか?」
「そうなの! みなさん、悩んでいらっしゃるみたいで」
義母が通っているデイケアでは「話が合いやすいよう、同世代の女性同士(あるいは男性同士)が同じテーブルで食事やおやつをとってもらうよう、席を配置している」と職員さんから聞いています。

どうやらその席で、嫁姑の悩みを打ち明け合って盛り上がっているようです。

「ある方はね、お嫁さんと同居していらっしゃるんだけど、そのお嫁さんがぜんぜん気が利かないんですって」
「あらあら、それは大変ですね。どういうときに気が利かないって感じるんですか」

義母は「そうねえ。なんて言ってたかしら……」と少し考えた後、「お茶の温度がぬるすぎる」「食事の味付けがちょっと薄い」「お風呂の温度が熱すぎる」などの姑トークを次々に教えてくれました。おかあさん、めっちゃ覚えてますね!

嫁の悪口は相当盛り上がるトピックスのようで、ネタが尽きません。

「離れているからこそお互いを気遣える」という話も織り交ぜて

「別の方はね、息子さんと二世帯住宅に住んでるんだけど、食事も別だし、結局、ひとりぼっちなんですって。二世帯住宅ってあんまり良くないのかもしれないわね」
「ものは考えようかもしれませんよ。四六時中、子どもに口を出される生活をしていたら、『ひとりにしてくれ!』と思うかもしれないし。おかあさんだって『日曜日ぐらいはヘルパーさんお休みにしてちょうだい』ってよく言うじゃないですか」

「そうそう! ひとりの時間はとっても大事ね」

義母が見聞きしてきた「嫁に対する愚痴」を、ひたすらポジティブな話に転換して返す。大喜利大会になってきました。

「子どもがいるのに毎晩遅くまで仕事をしている嫁」は「働きもののいいお嫁さん。孫と過ごせる時間もできて一石二鳥」とイメージをすり替え。「おとなしくて何を考えているかわからない嫁」は「ガミガミきつくて、話を聞かない嫁より付き合いやすい。こわがらせないようやさしくリクエストしてみれば?」という話に誘導します。

同居すればいいというものではない。離れているからこそお互いを気遣えるところもあるといった話も、ちょこちょこ織り交ぜていきます。そのたびに、義母が深くうなずくのでこちらとしては「その調子!」と合いの手を入れたくなります。いいぞ、その調子!

本音と建前を駆使した「気を遣わない仲」で、お互いが心身穏やかに

義母のおしゃべりはノンストップ。その日、夫の実家でやるはずだった書類仕事がまったく進んでいませんでしたが、腹をくくって付き合うことに。3回はお茶をおかわりしたと思います。義母は、いよいよ上機嫌。最終的にこんな結論に達しました。

「真奈美さん、わかったわ。みなさん、お嫁さんに気を遣いすぎなのよ! わたしみたいに、気を遣わないほうがうまくいくんだわ!! あ……少しは気を遣ったほうがいいわよね」

義母は気まずそうに照れ笑いしています。おかあさん、大丈夫です。お気遣いなく……!!

「気を遣わず、どんどん思ったこと言ってくれたほうがありがたいです! わたしもできることは一生懸命やるし、むずかしいと思ったら正直に伝えるので相談に乗ってください」
と伝えると、義母はさらにご機嫌。

「真奈美さん、そうよ! お互い気を遣わずにいきましょう!」とノリノリでした。

この会話自体、嫁と姑それぞれの気遣いに基づくものです。私の発言は「どうか、おかあさん、そうは言っても好き放題ワガママをおっしゃいませんように」と祈りを込めた建前ですし、義母だって「気遣い無用」といっても、不躾な物言いをされたらカチンと来るはず。

掛け値なしの本音をぶつけ合えば、血みどろの闘いにもなりかねません。だからこそ、お互いに建前も駆使するし、気も遣う。その上で「気を遣わない仲」という共犯関係を取り結ぶことが、お互いの精神の安寧に一役買ってくれるのではないかと思うのです。

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