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義父母の介護か実家の正月 誰を巻き込むのが正解? もめない介護35

新幹線の車掌のイメージ
コスガ聡一 撮影

今年も残すところあと1カ月。離れて暮らす義父母の認知症介護がスタートしてから、もうすぐ3回目のお正月です。

年末年始は訪問介護(ホールヘルプ)やデイケアもお休み。といっても、12月28日前後のギリギリまでは通常通りで、正月休みも「三が日」が過ぎれば、いつも通りの生活が始まります。

「正月三が日にお休みをいただく代わりに、毎年おせち料理を販売していますがどうされますか? 予約販売なので早めにご連絡いただけると助かります」

夕飯のお弁当をお願いしている高齢者向け配食サービスから最初に連絡があったのは、たしか2017年の今ごろの時期だったように記憶しています。

義父母に聞くと「いらない」「わざわざ頼む必要はない」と口々に即答。「正月ぐらいは好きな物を食べたい」と言われ、それもそうかと引き下がりました。当時の義父母は自分たちで近所のスーパーに出かけ、買い物をすることができていたためです。しかも、正月2日には毎年恒例の家族新年会があるので、必要があればその前後にフォローできるだろう、と。

症状が進行した今、夫婦ふたりで年末年始を過ごせるのか

連日、ヘルパーさんや訪問看護師さんの訪問があり、デイ通いもある。そんな中で「たまには休みがほしい」と愚痴っていた義母のことを考えると、年末年始ぐらい、“夫婦水入らず”で楽しく買い物に行くなどの過ごし方ができるのもいいかもしれない。

そんなふうに考え、ノンキに構えていられた2018年のお正月。しかし、次の1年で様子が少々変わります。

義父の緊急入院をきっかけに義母は有料老人ホームに一時入所、夫婦そろっての老人保健施設(老健)入所とリハビリを経て、在宅復帰。ひと目で分かるほど、極端な変化ではありませんでしたが、義父母の体力や認知機能はゆるやかに坂道を下りつつありました。

デイ通いの回数を増やし、買い物はヘルパーさんにお願いするなど、調整を加えながら、これまでどおり、夫婦ふたりの生活を続けていましたが、問題は年末年始です。年末の数日間と三が日のお休みの重みが、前の年とは明らかに違っていました。

しかし、義父母たちはさほど気にしていないようで、前年と同様、
「(おせち料理を)わざわざ頼む必要はない」
「自分たちで適当に用意するからいいわよ」
と言い、平然としています。

私たち夫婦の年末年始は、あえて例年通りとすることに

例年だと、年内にわたしの実家(仙台)に数日間帰省し、大みそかは友人宅で年越し。「あけましておめでとう」を言い合って解散し、元旦は昼過ぎから初詣というのが定番でした。でも、実家対応を考えると、どれかをパスせざるを得ない……?

義父母のことは気がかり。でも、だからといって、お盆と正月ぐらいしか帰らないのに、その帰省をとりやめるのは釈然としません。うちの親はまだふたりとも元気でピンピンしているけれど、ある日突然ポックリ……ということも考えられます。そのときに、恨みがましい気持ちを抱かなくてすむのかといえば、まったく自信がありません。

お世話になっている訪問介護事業所からは、「もし、年末年始も訪問が必要だったら言ってください。なんとか対応できるようにしますから」と連絡をもらっていました。

ただ、矛盾するようですが、ヘルパーさんたちには年末年始ぐらい休んでいただきたいという気持ちもありました。もしかしたら、もっとほかに困っているご家庭からのSOSが入る可能性もあるます。そう考えると、ここは「お言葉に甘えて」の場面ではない、とも感じていたのです。では、どうするか。夫に相談すると、こんな答えが返ってきました。

「仙台も年越しも全部『行く』前提でいいんじゃない? その上で何ができるか考えようよ」

お、おう……。さらに、夫はこう続けます。

「予定通り、年内は仙台に帰省して、うちの実家には姉貴に行ってもらおう。年明けは俺たちが行くといえば、姉貴もさすがにイヤとは言わんだろう」
たしかに……。

最難関はお雑煮。義父母二人きりでモチを食べるのは心配

仙台には12月29日から31日にかけて、帰省。義父母のための「おせち料理」は予約しておいて、31日にピックアップし、そのまま、友人宅の年越しへ。いつもなら解散後は自宅に戻るけれど、今回は実家近くのホテルをとっておき、仮眠をとった後、おせち料理を持って実家に向かうというプランを立てました。完璧! でも、次の瞬間、ぬか喜びだったことに気づかされます。

「雑煮をどうするかが、問題だな。おやじもおふくろも、モチを食いたがるだろうしなぁ……」
ああ……、モチ! 義父母は嚥下機能に特別な問題があるわけではなく、ごく普通に食事をとっています。大丈夫そうな気もしますが、ふたりきりでモチを食べて、のどにつまらせたら……?

とはいえ、義父母は「正月にモチを食べない」という選択肢を想像もしていないはず。こちらがいくら「のどにつまるとこわいから」と騒いだところで、「じゃあ、のどにつまらないように食べればいいでしょ?」と返されるに違いありません。そりゃそうだよなとも思いますが、新年早々、窒息騒動に直面するのはぜひとも避けたいものです。

目の前にドドーンと立ちはだかった、モチの壁。それは年末年始の介護サービスお休み問題よりも、はるかに分厚く、厄介なものに見えました。
この「モチ問題」は次回に続きます!

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