もめない介護

「主治医」は選べる!介護家族も不安や負担を解消 もめない介護29

コスガ聡一 撮影

「この先生を信じて、ついていって大丈夫なのだろうか」
「もっと、ほかに“いい先生”がいるのでは……」

認知症介護にかかわっていると、そんな不安や迷いに直面することがあります。ほかの介護家族の方から「うちの親に薬が合っていないような気がする」「転院を考えたほうがいいのではないか」といった悩みを打ち明けられることも少なくありません。

認知症というと、「もの忘れ外来」のイメージが強いですが、必ずしも認知症の人が全員、もの忘れ外来にかかっているわけではありません。たとえば、要介護認定の申請をするためには「主治医意見書」が必要ですが、ここでいう主治医は必ずしも、もの忘れ外来の医師である必要はありません。診療科に制約はなく、長年通っているかかりつけの内科や整形外科、耳鼻科などの先生にお願いすることも、しくみ上は可能です。

たとえば、親が大の病院嫌いで、“もの忘れ外来”なんて聞いただけで完全拒否。かえって話がややこしくなるというような場合、もの忘れ外来にこだわらず、「親が素直に話を聞く医師」に相談を持ちかけるのも手です。ともあれ、介護保険が利用できる状況をつくることを最優先とし、生活環境を整え、親の気持ちが落ち着いたところで、改めて専門医を受診してもいいわけです。

専門外来も、万能だとは限らない

ただ、専門外来の看板を掲げていたとしても、万能ではないということは、家族が認知症になったときに知っておきたいことのひとつです。

うちの義父母のケースで言えば、揃ってアルツハイマー型認知症だと診断される3カ月ほど前に、総合病院のもの忘れ外来を受診し、「認知症ではない」と診断されています。

当時、義父は「空き巣に入られた」と警察に通報したのに、警察官が認知症を疑っていたようだと憤慨していました。その義父とのやりとりよりも先に、義母から「自宅の2階に知らない女性が住んでいる……」という訴えを聞いていたこともあって、「認知症の疑いを晴らすためにも、もの忘れ外来を受診してみませんか?」と義父に提案するとあっさり承諾してくれました。

ただ、いま思い返しても「抜かっていた……」と思うのは、「自分たちだけで大丈夫」という義父の言葉をうのみにし、受診に付き添わなかったことです。

受診後、「認知症の疑いが晴れた」と義父母は大喜び。しかし、よくよく聞くと、診察時には空き巣の話も、「2階の女性」の話もしなかったというのです。義母曰く、「だって、そんな話を聞かされても、先生だってお困りになるでしょう……?」。

夫婦そろって、見事に都合の悪い話は伏せたまま、本人たちが希望していた「認知症ではない」という“お墨付き”をゲット。のちに、認知症の確定診断が出たクリニックでも、「脳はさほど萎縮しておらず、年齢相応」と説明されたことを考えると、なおさら、認知症が見逃されやすい条件が揃っていたのかもしれません。

もの忘れ外来への通院がスタートしても、なお終わらない主治医探し

さらに、認知症だと診断され、もの忘れ外来への通院がスタートした後も、主治医探しは終わりませんでした。

義父や義母が抱える不調は、認知症だけではないためです。高血圧に前立腺肥大、甲状腺機能障害、腰の痛みに、下痢、便秘、歯の痛みと、さまざまな持病やトラブルに悩まされています。

元気だったころは各々、症状に応じてかかりつけ医のもとを受診し、相談に乗ってもらったり、薬をもらったり。でも、ひとりでの受診は少しずつ難しくなってきてもいました。受診予約をしても、予約日を忘れてしまう。予定通り受診し、薬をもらうところまでは問題なくできても、薬を紛失することも。また、のちにわかったことですが、「薬を盗まれたので、処方してほしい」とかかりつけ医を訪れるといったことも頻繁にあったそうです。

かといって、すべての受診に付き添うのはなかなか難しい。わたしひとりではなく、夫や義姉と分担したとしても、実現できそうにありませんでした。

なんとか、受診付き添いをシンプルにまとめたい。そう考えて、最初にトライしたのが、もの忘れ外来クリニックに併設されている、内科も一緒に受診するという方法です。義父母が新しい先生を気に入ってくれれば、受診先をある程度集約できるのでは……? と、考えました。しかも、もの忘れ外来と内科の予約を同じ日にすれば、付き添い日程もまとめられて一石二鳥です。

ご本人と家族にとっての「名医」探しには、しっかりとエネルギーをかけて

ところが、いざふたを開けてみると、医師と義父母とのやりとりがあまりスムーズにいきません。もしかしたら、先方も様子を見ていた時期だったのか、もともとの生真面目さゆえなのか、義父母がなにか不調を訴えても、二言目には「それは内科の領域ではないので専門の科を受診してください」とおっしゃる。そのこと自体は、正しいのかもしれないけれど、わたしたち家族が求めているものとはちょっと違う……。

しばらく様子を見たものの、結局、担当ケアマネジャーに相談し、「身体の不調全般を総合的に診てくれる」「往診対応してくれる」を条件に、別の先生を探してもらいました。

もの忘れ外来については、認知症の確定診断や要介護認定の主治医意見書でお世話になっている先生にそのままお願いし、もの忘れ外来以外の部分を往診医にお願いするというスタイルです。すべてを往診医にまとめる選択肢もあり、そのほうが付き添いの手間は省けるのですが、あえてそうはしませんでした。

もの忘れ外来に通い始めて、メキメキと義父母の状態が良くなっていたので、その環境を手放したくないと思ったというのがいちばんの理由です。もう一点、今後、重大な判断を迫られたとき、継続的に義父母の状態を診てくれている医師がふたりいれば、セカンドオピニオンをもらいやすいのではないかとも考えました。

認知症は、薬だけで治せる病気ではない反面、かかわる医師の良し悪しが重要だともよく言われます。ご本人と家族にとっての「名医」をどう探し、どう関係を深めていくか。そこにしっかりエネルギーをかけることが、回り回って介護の負担を減らしてくれると感じています。

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