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義父が肺炎で緊急入院!認知症の義母をショートステイへ もめない介護27

食卓につく女性のイメージ
コスガ聡一 撮影

「ショートステイに行ってほしいけど、なかなか父親がOKしてくれません……」

そんな悩みを打ち明けてくれた陽子さん(仮名・52歳)は、在宅介護歴4年目になるそう。認知症の父親(82歳)を、母親(78歳)と協力しながら介護してきました。

父親はデイサービスには機嫌良く通ってくれますが、ショートステイとなると「どうして行かなくてはいけないんだ」と渋い顔をするとか。陽子さんが、「たまにはお母さんをゆっくりさせていあげたい」と説明すると、「邪魔もの扱いする気か」と怒るため、「こちらも黙るしかなくて……」と、陽子さんはため息をつきます。

ショートステイ(短期入所生活介護)は、要介護1~5の認定を受けた方が短期間、施設に入所できるサービスのことです。介護保険が適用され、1泊2日から最大30日間連続で滞在することができます。たとえば、在宅で介護している人が出張や旅行などで家を空けなければならないときはもちろん、介護を「小休止」したいときに重宝されています。

我が家の場合は別居介護でしたが、ケアマネジャー(ケアマネ)さんから「将来のためにショートステイの利用も検討してみては?」と勧められていました。時期としては、義父母がデイケア通いに慣れ、通う回数を週2回に増やしたぐらいだったと記憶しています。

ショートステイになかなか首を縦に振らない義母

義父(当時89歳)、母(当時86歳)はそれぞれアルツハイマー型認知症と診断されながらも、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問看護、デイケアなどの介護サービスを組み合わせ、夫婦ふたり暮らしを続けていました。しかし、どちらか片方が体調を崩し、入院や施設入所を余儀なくされた場合、残された側がそのまま一人暮らしを続けるのは厳しくなるはず。

そんな「将来」を見越しての助言でした。

家族としては、ショートステイの利用には大賛成。今すぐではないにしても、いつか本格的な施設入所が必要になるかもしれません。そんなとき、ショートステイの経験があれば、少しは抵抗感が薄れるかもという期待がありました。

「温泉旅行に行くような感覚で、お泊まりを経験してみませんか?」
「旅行ねえ……。うちのほうが落ち着くのよ」

「おふたりともお疲れがたまっているでしょうから、少し羽を伸ばしてゆっくりなさいませんか」
「休むと身体がなまっちゃうから良くないの。お父さまも寝てばかりいるし」

ケアマネさんがそれとなく、ショートステイ利用を促してくれましたが、義母はなかなか首を縦に振ってくれません。その都度、“ああ言えば、こう言う”で煙にまくのです。

本人たちが必要性を感じるようなアプローチを

ただ、無理強いして、ほかの介護サービスへの拒否を引き出してしまっては元も子もありません。ケアマネさんと相談し、「ご本人たちがもう少し必要性を感じてくれるようなアプローチを探しましょう」という話になりました。

これといった決め手が見つからずに数カ月が過ぎたある日、緊急事態が発生します。義父が肺炎で入院することになり、その間、義母を預かってくれる施設を急遽、探すことになりました。かつてケアマネさんが懸念していた問題に、思ったよりも早く直面することになったわけです。

義母は「ひとりでも大丈夫」「自宅で、お父さまの帰りを待つ」と言って聞きませんでした。緊急入院の手配と平行しながら、義母のかたくなさに向き合うのは正直つらく、「もう好きにすればいい……」と投げ出したくもなりました。気を取り直すきっかけになったのは、たまたまその日、訪問予定が入っていたヘルパーさんの鶴の一声でした。

「これまで通りヘルパーが入ったとしても、A子さん(義母の名前)おひとりでは生活を維持するのは難しいと思います」

さらに「医師の言うことなら耳を傾けてくれる可能性があるので、先生から言ってもらいましょう」とも。

義父の入院前にインフルエンザの検査をするために、往診に来てくれた医師をつかまえ、義母をなんとか説得してもらえるよう、お願いしました。義母の反応は「先生が言うなら、仕方がない……」というものでした。

ケアマネさんに、すぐに入所させてくれる有料老人ホームを大至急探してもらい、送迎ワゴンを手配。その日の夕方に救急車で義父を入院先に搬送し、翌日には義母を有料老人ホームに送っていきました。

いざというときの選択肢を、一つでも増やしておくために

もっとも、医師の説得で不承不承納得したものの、義母の本音としては「施設入所なんてしたくない」ですから、「やっぱり行きたくない」は再燃します。「緊急事態だから」となだめ、なんとか入所にこぎつけましたが、義母の強い不安感と混乱はしばらく続きました。

姪たち(義母にとっては孫)に協力を仰ぎ、かわるがわる面会に行くなど、思いつく限りの手を打ちました。ただ、結局、義母が落ち着いたのは緊急入所から約10日後、デイ通いでお世話になっていた介護老人保健施設に、再入所できたときのことでした。

顔なじみの職員さんたちに迎えてもらい、義母はようやく緊張から解放されたという顔をしていました。これまでデイ通いで利用していたことや、ちょうど空きが出たなどの幸運が重なって、比較的早いタイミングで入所できましたが、「もっと早くからショートステイを利用していれば……」という後悔もありました。

長期的な施設への入所とまではいかなくても、何らかの理由で在宅介護を続けるのが難しくなる可能性はあります。そのとき、どこで介護サービスを受けるのか。いざというときの選択肢を増やしておきたいし、そのために協力してほしい。親にショートステイ利用を提案するとき、そんなアプローチも、あったのではないかと反省も込めて思うのです。

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