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ショック…トイレを失敗した認知症の母に手を上げそうに【お悩み相談室】

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介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.同居している認知症の母(84歳)を自宅で介護していますが、トイレを失敗されたときにイライラして手を上げそうになりました。認知症になるまでは仲が良く大好きな母だったのに、そんなことをしそうな自分にショックを受けました。このまま進行していくと虐待をしてしまいそうで怖いです(50歳・女性)

A.大好きだったお母さんを自宅で介護されているのは、素晴らしいことだと思います。手を上げそうな自分にショックを受けているというのは、尊い感情です。ショックを受けているからこそ、手を上げずに済んでいるんです。つらい状況かもしれませんが、自分をコントロールできている証拠です。

トイレを失敗されると、家具がダメになってしまったり、ニオイが長時間残ったり、とても困りますよね。イライラするのは当然です。私たち介護の専門家であってもイライラする自分と心の中で葛藤しています。でも手を上げません。私たちは介護の専門家であり、手を上げないための技術、知識を持っているからです。

けれども相談者が持つ「大好きな母」という家族ならではの感情は、専門家には持てない感情です。これからもお母さんを支えていくうえで、大切な感情だと思います。

イライラを押し殺すことは不可能ですが、その感情を放置せずに解消していくことは必要です。そのためのノウハウは人によって違うと思うので、趣味を持つ、あるいは友人や専門家に相談したり、地域の家族会などに参加して同じ立場の人に話したり、どうすればイライラを解消できるのか、自分に合った方法を探ってみてください。

トイレの失敗は、介護する人にとって非常に大きなストレスであることは確かです。進行してこの先もっと大変な状況になる可能性もあります。このため、紙オムツの着用など福祉用具を積極的に取り入れて、失敗しない工夫をしていくことも大切です。福祉用具専門相談員にお母さんのトイレの状況を説明し、お母さんに合った排泄用品を提案してもらうことをお薦めします。自治体によっては、オムツの支給をしている場合もあるので確認してみてください。

夜間に失禁してベッドを濡らしてしまうといった話を耳にすることがありますが、実はこうした失敗は長時間タイプのオムツや防水シーツ、ポータブルトイレを組み合わせるなど、対応次第で防げるのです。薬の組み合わせによって尿量が多くなったり、便がゆるくなったりすることもあります。トイレのことは介護の中でも意外と専門性の高いケアなので、自分だけで何とかしようとせず、専門家とよく相談することが大切です。

認知症の人にとってもトイレの失敗を人に見られることは恥ずかしく、イヤなことです。着替えるタイミングでオムツを用意しておけば、比較的スムーズに受け入れられると思います。拒否するようであれば、防水機能のある下着などから取り入れ始めてもいいかもしれません。

【まとめ】トイレの失敗にイライラしてしまうときには?

  • 自分がイライラするのは当たり前のことだと受け入れる
  • イライラを解消するための自分なりのノウハウを見つける
  • 福祉用具専門相談員や専門家に相談してトイレを失敗しないための排泄用品を活用する

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