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認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

秋の味覚を言葉遊びと食べやすさで取り戻す 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

さんまと春菊のおろし和え

フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。季節との結びつきや、食べ方が分からなくなっても、旬のおいしさは伝わります。

※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません

母とは、1文字目が同じ単語を交互に出し合う「言葉遊び」のほかに、ことわざ遊びもよくやっていた。
ことわざを上と下に分けて、「豚に真珠」ならば、先に私が「豚に」と言い、下を母に言ってもらう。間違えずに続く日もあれば、チグハグな日もあった。
「豚に?」「真珠」
「猫に?」「真珠」
「違う、違う、猫に小判だよ」となり、ふたりで笑う。あれ? でも意味は似ている。
「弘法にも?」「叩いて渡る」
「『石橋を叩いて渡る』で、弘法にもの続きは、筆の誤りなのよ。これは難しいよね」
「三つ子の魂?」「百まで」
締めは大抵「老いては?」「子に従え」。
「昔の人はいろいろなことが、わかっていて偉かったわね」と、いつも母は言う。
「じゃあ、次は連想ゲームね。秋の食べ物といえば?」という質問には無言のまま。季節と食べ物の結びつきは薄らいでしまったようだ。
「秋といえばさんまだよ」
日々の食事づくりで心がけていたのは季節を感じてもらうこと。言葉遊びをしながら、今夜のおかずに興味を向けていく。
丸ごと1匹の焼きさんまは、食べ方を忘れてしまったようだったので、目の前で身をほぐし、大根おろしと和えて出すようになった。

さんまと春菊のおろし和え

肉や魚などのたんぱく質は焼くと身が締まって硬くなるので、ほぐしておろし和えにすると、しっとりして食べやすくなります。神経質になることはありませんが、かみにくい大きな皮は除いておくのがおすすめです。魚は焼く前に塩を振り、出てきた水分をとることで臭みがとれます。さんまの代わりに、さばやあじの塩焼きでも、ぜひお試しください。春菊を混ぜることで彩りをよくしました。

材料 2人分

さんま(頭と内臓は除いたもの) 2匹
塩 少々
大根おろし 100g
春菊の葉 1本分
ぽん酢 小さじ2

作り方

  1. さんまは塩を振って15分ほど置き、余分な水気をとる。もう一度塩を振って魚焼きグリルで焼く
  2. 春菊の葉先を細かくちぎる
  3. 大根おろしはざるに入れて水気をきる
  4. さんまの身をほぐし、大きな皮は除き、大根おろしとよく和える
  5. 春菊とぽん酢を加えて軽く混ぜる

器協力:我妻珠美

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