アスパラ、雨宿り…朝食作りながら言葉遊び。認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。母の歴史が見え隠れする「言葉遊び」で、クリアな朝を。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
朝、母と1文字目が同じ単語を交互に出し合う「言葉遊び」をするようになった。
たとえば「あ」から始まる言葉を挙げるときは、「『あ』がつく言葉探し」、「き」がつく言葉を挙げるときは「『き』がつく言葉探し」と呼ぶ。
「あ」がつく言葉探しなら、あんこ、あんぱん、雨、遊び、あられ、雨宿り、飽きる、足、歩く、アメリカ、アジア、あり、油、頭、安心、あんばい、当たり、飴、アスパラガス……。
こんなふうに思いつく限りの単語を順番に挙げていく。
母には記録係になってもらい、画用紙にすべての単語を書き出してもらう。
ときどき造語が出るのはご愛嬌。「あ」が尽きれば「い」「う」「え」「お」と進むもよし、母に1文字目を決めてもらうのもよし。2時間ほどは続けられる。
70年以上生きてきただけあり、語彙も豊富で子どもとするしりとりとは違う。大学時代に学生運動を行ってきた母は「あ」といえば「安保反対運動」が必ず挙がる。
母の脳から飛び出してきた言葉を眺めつつ、私は手を休めずに料理を作る。
「朝ごはん、できたよ」
「ありがとう、おいしそうねぇ、あら、アスパラガスにもあがつくわね」
頭がクリアなときは、料理に使われている野菜の言葉をうれしそうに挙げてくれた。
アスパラガスとにんじんの簡単白和え
アスパラガスの緑色とにんじんの赤の組み合わせが食欲を刺激します。和風の顆粒だしで煮て、水切りした豆腐と和え、削り節のうまみでいただきます。
材料 2人分
アスパラガス 4本
にんじん 1/3本
豆腐 1/2丁
和風顆粒だし 3g
ねり白ごま 大さじ1
しょうゆ 小さじ1
削り節 5g
作り方
- 豆腐は水切りしておく
- アスパラガスははかまをとり、斜め切りにする。にんじんは細切りにする
- 鍋に水200ml、顆粒だしを入れて火にかけ、アスパラガスとにんじんをやわらかくなるまで煮る
- ねり白ごまとしょうゆを3の野菜に和え、豆腐をスプーンで崩して和え、塩、削り節を加えて混ぜる