野菜の色彩に生命力をもらう秋のスープ 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子、器協力/我妻珠美
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。にんじん、トマト、さつまいも。生命力あふれる赤色の野菜たちは、生きるエネルギーを与えてくれます。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
母が食卓で夢中になって絵を描いているときの表情は穏やかだ。口角も自然に上がっている。次から次へと気持ちよさそうに画用紙をめくっていく。
母が「私、絵描きになれるかしら?」と聞いてきたので、「自分で絵描きと思った瞬間からが絵描きだよ」と答えた。画用紙の隅に、日付とサインを入れるように言ったら、自分の名前をローマ字で書いていた。今はもう字が描けないので、母の描いた「作品」がなかなか捨てられない。
さらに、昔は緑が好きだったのに、「好きな色は赤」と言うようになり、絵にもよく赤を使う。にんじん、トマト、さつまいもなどを見ると「あらー! きれいねぇ」と目を輝かせる。赤は生命力の色。野菜の色からも生きるエネルギーを吸収しているのだろうか。いつかその話を介護福祉士さんにしたら「認知症になると赤を好む人が多い」と言っていたので、赤から生命力をもらっているのは、母だけではないかもしれない。
例えば、さつまいものミルクスープも、さつまいもの皮まで使って、赤を生かし、汁は少なめにして具が見えるようによそう。
どうか明日も母がイキイキと暮らせますように。
さつまいものミルクスープ
さつまいもの甘みをじんわり感じる秋のスープです。さつまいもは細長いもののほうが糖分を蓄えており、甘みを感じやすいといわれています。いも類がモソモソして食べにくい人も、スープにするとやわらかくなり食べやすくなります。
材料 2人分
さつまいも 1/2本(130g)
玉ねぎ 1/4個
ベーコン薄切り 2枚
バター 10g
水 100ml
牛乳 200ml
顆粒コンソメスープの素 小さじ1/4
作り方
- さつまいもは皮ごと、厚さ1cmのいちょう切りにする。玉ねぎは繊維に沿って薄切りに、ベーコンは幅1cmに切る
- フライパンにバターを入れて熱し、さつまいもを中火で炒める。油がなじんできたらベーコンと玉ねぎを加えて炒め合わせる
- 水(ひたひたの量に調整する)とコンソメスープの素を入れ、さつまいもがやわらかくなるまで7分ほど煮る
- 牛乳を加えて弱火で1分ほど煮る
器協力:我妻珠美