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夫が認知症になり息子も孫も疎遠に 介護も手伝わない 専門家が回答

盆栽の剪定を楽しむ祖父と孫のイメージ

介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の夫(80歳)と二人暮らしです。近くに息子家族が住んでいるのですが、2年前に夫が認知症と診断されてから家に寄り付かなくなりました。息子家族にはこれまで金銭面での援助もしてきましたし、少しは介護の手伝いをしてほしいです。せめて孫だけでも顔を見せてほしいと思うのですが「忙しい」と言うばかりで(79歳・女性)

A.息子さんは、自分を育ててくれたかつてのお父さんとは違う姿に、衝撃を受けたのだと思います。家族だからこそ、受け入れられないんですよね。お父さんに対して、こうあってほしいというイメージをお持ちなのかもしれません。受け入れたくない、できることなら見たくないという息子さんの気持ちもよくわかります。

けれども、これから先のことを考えると、息子さんがお父さんの現在の状態を知り、受け入れることは家族としての歩みの一つと捉えなければなりません。相談者は一人で介護をしていて、この先、夫の認知症がさらに進行していくことを考えると不安で仕方ないと思います。介護というのは幅広く、重いものです。まずはケアマネジャーなど専門家に、家族がどんな介護を担っていかなくてはならないのか、具体的に挙げてもらうのがいいと思います。その中で、息子さん家族に介護のどの部分を手伝ってほしいのか、できるだけ具体的に伝えることをおすすめします。息子さん家族も、介護を手伝いたくても何をしたらいいのかわからないのかもしれません。

「せめて孫だけでも顔を見せてほしい」というのは、切実ですね。僕もそう思います。認知症の人が小さい子どもに会うことは行動心理症状(BPSD)の軽減につながるというのが、実感としてあります。認知症がどんなに進行しても、小さいものを守らなければならないという感覚は保たれているように思います。お孫さんとの面会がお父さんのためになることを、ぜひ息子さんに伝えてください。

息子さんと同じように、お孫さんも以前とは違うおじいさんの姿にショックを受けるかもしれないという心配もあるかもしれませんが、その点は安心してください。子どもは大人よりも状況を受け入れる柔軟さがあります。例えば大人は認知症の人がおかしな言動をしても、相手への配慮から「おかしい」とは言いませんよね。でも子どもは率直におかしいと言える感性があり、それが場の笑いにつながることもあります。子どもがいると自然と笑顔があふれる瞬間が訪れるんですよね。場が寛容な雰囲気に包まれて、何もかも許されるような……。お孫さんがいるということは、家族の関係を取り戻すチャンスなんです。

お父さんの人生の最終ステージに、家族としてどう寄り添うのか。認知症になったことをきっかけに、それぞれが考えられるといいですね。

【まとめ】息子家族に介護を手伝ってもらうには?

  • 息子にお父さんの現在の状態を理解してもらう
  • 家族が担う介護の内容を専門家とともに具体化する
  • お孫さんとの面会がお父さんのためになることを、息子に伝える

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