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一人暮らしのご近所さんが認知症に どう見守ればいい?専門家の答えは

窓際に座る女性のイメージ

介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.近所に住む一人暮らしの女性(75歳)が認知症になったようです。若いころにお世話になった人なので、たまに様子を見に行っていますが、先日「お金目的だろ」と疑われてしまい、行けなくなってしまいました。ヘルパーは週に2日行っているようですが、女性の息子夫婦は盆と正月しか帰らず、火事でも起こされたら……と心配です(42歳・女性)

A.一人暮らしの高齢者が増えている今、近所の人の気づきというのはとても大切です。さらに相談者は「たまに様子を見に行く」という行動を起こされていて、本当に素晴らしいことだと思います。

「お金目的だろ」という言葉は、初期のアルツハイマー型認知症の典型的な症状といえます。長年の信頼関係が一瞬にして崩れるような、つらい症状ですよね。言われた側だけではなく、信頼している人を疑わなければならない本人もつらいのです。お金は生きていくうえで欠かせない存在です。認知症によって記憶障害が起こり、その大事なお金がどこにいったのかわからないという恐れを日々感じているのかもしれません。それがお金への執着や「もの盗られ妄想」という認知症特有の症状につながるのでしょう。最初は本人も財布をなくしたことを自分の不注意だと考えるはずです。けれども何度も繰り返し、どんなに探しても見つからないと、他人を疑うのは自然なことかもしれません。

この女性が相談者を疑うのは、認知症の症状であり、決して悪意や恨みがあるわけではないということをまずわかってあげてほしいと思います。

「火事でも起こされたら」という不安ですが、確かに火事や車の運転は重大な事故につながる危険性があり、見過ごせません。一人暮らしでも、介護保険サービスを利用した住宅改修や福祉用具などで火事を防ぐ方法はあります。相談者が息子夫婦に連絡をとれる状況なら、お母さんの情報をぜひ教えてあげてください。近親者に限って「まだ大丈夫」と考えがちなので、最近の状況を細かく伝えてあげるといいと思います。

連絡をとれる関係でなければ、地域包括支援センターや地域の民生委員に女性の状況を伝えてください。地域包括支援センターでは、一人暮らしの高齢者がいることは把握していると思いますが、認知症を発症したというところまではなかなか把握できないと思うので、近所の方の情報は非常に貴重だと思います。

こうした一人暮らしの女性を地域から切り離すのではなく、相談者のような近所の人が早い段階で気づき、地域で対応していくことが今後ますます望まれます。相談者には、ぜひ今後も継続して見守っていただきたいと思います。

【まとめ】近所の人が認知症かもと思ったら

  • 家族に最近の状況を知らせる
  • 家族に連絡がとれなければ地域包括支援センターや民生委員に連絡する
  • 見守りを続ける

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