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認知症の父が暴言で専門職の人を追い返します 専門家のアドバイスは

握りこぶしのイメージ

介護事業に携わる井上信太郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の父(85歳)を自宅で介護しています。最近は症状が進行して私の負担も大きくなってきたので訪問看護師やヘルパーに来てもらっているのですが、父は家に入られるのをイヤがり、暴言を吐いて「帰れ」と追い出そうとします。どうしたら慣れてくれるでしょうか(56歳・女性)

A.「慣れてほしい」というのは、娘さんとしての本心ですよね。よくわかります。ただ認知症は複雑な病気なので、時間が経てば慣れるというものでもありません。「帰れ」という暴言は、認知症で起きる行動心理症状(BPSD)の一つです。BPSDが出るのは、不安や恐怖を抱えているというサインでもあります。不安や恐怖の原因が、どこにあるのかをまず考えなくてはならないと思います。

暴言を吐くのはどんな状況のときか、訪問看護師やヘルパーに対してだけなのか、原因を探るために専門職を交えてしっかりと話し合う必要があります。家族にしかわからないようなお父さんの情報を専門職にも共有できるといいですね。お父さんは「敬語で話しかけられると相手を警戒する」や「親しみやすい言葉で話しかけられるとバカにされていると感じて怒る」といった情報は貴重なものです。原因が訪問看護師やヘルパーの言動にある可能性も十分にあるのです。

認知症の原因となる病気に合わせた対応も大切です。アルツハイマー型なら記憶障害があるので、知らない人が家に入ってくることが不安なのかもしれません。その場合、どういう理由で何をするために訪問看護師やヘルパーが来ているのか毎回説明すれば、お父さんを安心させることにつながるかもしれません。前頭側頭型やレビー小体型なら対応する側の言動はあまり関係なく、お父さん自身の状況や状態によるものが大きいと思います。薬や時間帯の問題、幻視がある可能性もあります。薬の飲み合わせが悪いと、こうした症状が出ることもあるのです。もし医師から原因となる病気を診断してもらっていなかったら、認知症疾患医療センターなど認知症を専門的に診てくれる医療機関を受診して、診断してもらってください。

認知症が進行すると、知らない人に対する警戒心がより強くなります。なるべく早い段階で顔なじみになり、自分にとって安心できる存在なのだという認識を持ってもらうことも大切です。

【まとめ】自宅を訪問する専門職に暴言を吐くときには?

  • 不安や恐怖を抱えているサインであることを理解する
  • 不安や恐怖の原因を探るために専門職を交えて話し合う
  • 原因となる病気に合わせた対応をする

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