もめない介護

お義母さんお茶を…高齢の親の水分補給にペットボトル? もめない介護14

コスガ聡一 撮影

「きちんと水分をとっていますか?」
「たっぷり水分をとりましょうね」

この時期、もの忘れ外来の受診や往診のとき、必ず話題にのぼるのが水分補給のこと。義父母は毎回、「大丈夫です」「よくお茶を飲んでます」と答えていますが、その言葉どおり、しっかり水分補給できているかどうかはまた別の話です。

以前、熱中症予防のためのエアコン利用を巡る攻防をお伝えしましたが、水分補給もまた、厄介な課題のひとつでした。

義父母の認知症が同時発覚したのは、2017年6月のことです。要介護認定を申請し、訪問看護や訪問介護(ヘルパー)を手配し……と、てんやわんやで介護体制を整えたものの、気づけば、“最初の夏”がもう目前に迫っていました。

「ご本人は水分をとっているつもりでも、とれていないことがあります。ご家族がしっかり目を配ってください」

医師からはそんな助言がありましたが、義父母は夫婦だけのふたり暮らしです。夫の実家までは片道1時間半ぐらいかかり、月に数回程度ならなんとか対応できるけど、頻繁に様子を見に行くのは厳しい、というような状況でした。

では、どうしたか。

飲む量を把握しやすいペットボトルを活用

担当ケアマネジャーに相談すると、「500mlペットボトル」の活用を勧められました。夫婦でそれぞれ、1日に2本ずつ飲んでもらえれば、1日1ℓの水分補給は確保できる計算になります。

医師からは「最低でも1日2ℓは水分をとったほうがいい」と言われましたが、高齢の方にとって2ℓペットボトルからコップについで飲むのは重労働。「衛生面を考えても、500mlペットボトルのほうが管理しやすいのでは?」というのがケアマネさんの意見でした。

こうしてスタートした「ペットボトルで水分補給」作戦。ミネラルウォーターやお茶をそれぞれ箱買いし、義父母のどちらがいつ飲んだのかわかるよう、飲むべき日付と名前をマジックペンで書き込みました。義父母には「熱中症予防のために、1日2本ずつ飲みましょう」と提案し、ペットボトルが入っている段ボール箱の外側にも、その旨を大きく書きます。

義母には「お茶なら、お湯を沸かせばいつでも飲めるのに……」と渋られました。でも、「ペットボトルだと、量を把握しやすくて便利なんですって。お医者様もそういってました」と説明すると、不承不承ながら納得。「このお茶、テレビのCMで見たけど、けっこうおいしいのね」と、いったんは受け入れてもくれました。

これにて一見落着……と思いきや、そうは問屋がおろしません。

飲むべきお茶をヘルパーさんに振る舞う義母

「500mペットボトルを1日2本飲む」という目標は、義父には効果的でした。もともと生真面目で、健康への関心も高い義父は「1日2本」の目標をクリアすべく、決められた分量を毎日、いっしょうけんめい飲んでくれました。

問題は義母です。「一口飲んでは残す」を繰り返し、飲み切れなかった分をヘルパーさんが処分しようとすると「もったいないから、そのままにしておいて」と捨てさせません。揚げ句の果てには、「水分をしっかりとらなきゃダメよ」「あなたたちもほら、お茶を召し上がれ」と自分用のペットボトルからお茶をついでまわるのです。おかあさま、ご自分でお飲みになっていただけますでしょうか……。

担当ケアマネに相談したところ、こんな答えが返ってきました。
「ご夫婦ともに、お子さんたちが心配してくださってることはよくよく理解されていて、期待にこたえたいというような気持ちもおありだと思うんです。ただ、実際にはうまくいかず、苦肉の策としてペットボトルのお茶をついで回られているのかもしれません。あと、名前と日付がプレッシャーになっている可能性も……」

ややこしい!

量にこだわらず、これまでより飲めていればオッケーの気持ちで

ケアマネさんと改めて懸案事項をひとつずつ検討しました。名前と日付の記入はプレッシャーの原因になっているかもしれないけれど、「飲めているのか、飲めていないのか」の判断材料になる。話し合いの中で、義父ばかりが「しっかり水分補給ができていて素晴らしい」とヘルパーさんや訪問看護師さんに褒められているらしいということもわかりました。義母が内心「おもしろくない」と感じていても不思議ではありません。

このときの結論としては、名前と日付の記入はもうしばらく続けてみようという話になりました。ただ、声がけについては、夫婦で差がつかないよう、ヘルパーさんや訪問看護師さんにも事情を伝えて相談することに。家族からのアプローチも同じく見直しました。「お父さんは<1日2本>をクリアできていてすごいね」「お母さんもがんばって」など義父母を比較するような物言いはくれぐれも避けるよう、心がけました。

知らず知らずのうちに、本数にこだわってしまっていたことも反省し、軌道修正しました。熱中症対策に油断は禁物。でも、真面目に向き合いすぎても親を追いつめてしまいます。1日2本飲めればベスト。でも、1日1本でもドンマイ! 少なくとも、これまでよりは飲めているということでオッケー。

ペットボトルの残量を数えては、ハラハラしながら過ごした最初の夏。

「ねえ、あなた知ってる? ペットボトルのお茶ってとっても便利なの。すぐ飲めるのよ」義母がニコニコしながら教えてくれたのは、9月も半ばを過ぎたころのことでした。

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