熱中症が怖い!認知症の義父母とエアコンを巡る攻防 もめない介護12
編集協力/ Power News 編集部
風邪やインフルエンザ予防に追われた冬がようやく終わった……と思ったら、今度は熱中症が心配な季節がやってきました。認知症に限らず、高齢の方は温度に対する感覚が鈍くなり、室内でも熱中症になりやすいとよく言われます。
室内の温度・湿度の管理が欠かせませんが、これも一筋縄ではいきません。エアコンを使うよう勧めても、「体が冷えるからいや」「窓を開ければ十分」とご本人が断固拒否するケースもあれば、リモコン操作を誤って真夏日に<暖房>をガンガンに入れてしまったり……。
我が家の場合は、「暑いときだけ、短時間エアコンをつける」という義父母の長年の習慣に悩まされました。
ちょうど2年前、自宅には週2回ずつ、訪問看護師さんとヘルパーさんが来てくれていました。梅雨が近づくころから連日のように、室温管理の相談の電話がかかってくるようになりました。
「室温がかなり上がっているのに、窓を閉め切っている状態で心配です」
「声はかけているのですが、『ちょうどいいから』とおっしゃって……」
「今日はエアコンの温度設定が23度とかなり下がっていて、ダウンジャケットをお召しになってました」
電話がかかってくるたびに、アチャー!と思うものの、自宅から夫の実家までは片道約1時間半。室温管理のためにしょっちゅう行き来するのは現実的ではありません。当時、義父母はともに要介護1。電話でのやりとりはできるものの、少し話が込み入ってくると、うまく伝わらないこともしばしばありました。
ケアマネさんたちと立てた3つの作戦
家族としては、寒くなりすぎない程度にほどよい温度設定をした上で、エアコンをつけっぱなしにしてほしい。でも、義父母にとってはこれまでの習慣にないので、そんなことを言われてもピンと来ない。おそらく“もったいない”という抵抗感も働いていたのではないかと思われます。
そこでケアマネジャーさんやヘルパーさんと相談し、次の3つの作戦をたてました。
① エアコンの設定温度は28度をキープ
② 義父母には折りにふれて、「熱中症予防にはエアコンを使うことが大事」と伝えていく
③ 義母にはあわせて「エアコンはつけっぱなしのほうが、電気代も安くなる」と伝える
そして、エアコン近くの壁と台所に、上記の①~③の内容を盛り込んだ貼り紙を掲示。また、ヘルパーさんの訪問時には室温とエアコン設定温度を確認してもらうよう、お願いしました。
もし、設定温度がやたら高かったり、低かったりしたら、さりげなく修正。ご本人たちに「設定温度が違っているので変更していいですか?」という確認はとらない。もし、ご本人たちから「何してるの?」と質問があれば、貼り紙を指しながら「ここにあるように、28度にしておきますね」と説明するという方針も決めました。
意固地になる相手には「全員の了解事項」で乗り切る
いかに温度管理が大切かを長々と説明したところで、しばらくたてば忘れてしまう可能性が高い。とりわけ義母はもともとの性格もあるのか、楽しいことは認知症になってからも案外としっかり覚えているのに、イヤな記憶はすぐさま忘却の彼方です。
「何度言ったらわかるの!」なんて喧嘩に発展するのはぜひとも避けたいところ。無理強いされたと感じたら、テコでも動かなくなるタイプだということは、そろそろわかってきてもいました。
なので、とにもかくにも“さりげなく”、室温・湿度の管理の実現だけに注力しました。
たとえば、「設定温度が違っているから」という説明は、言われるほうからすれば“ダメ出し”と感じるかもしれません。プライドを傷つけ、「変更しないで」と意固地な対応を引き出してしまう可能性も考えられます。
その点、「聞かれたときだけ、貼り紙を示しながらの説明」作戦であれば、ヘルパーさんや家族は「義父母も含めた全員の了解事項」に従って行動しているだけ、と印象づけられるのではないかという思惑もありました。
ヘルパーさんの根気強さと本人の自覚で解決へ
果たして、その結果は……というと、1年目の夏は、“つければ、消す”の繰り返しで、絵に描いたような、いたちごっこでした。義母は「だって、もったいないじゃない」と口をとがらせ、「どうしてみんな、エアコンをつけようとするのかしら!?」と釈然としない様子。ただ、あるときテレビの情報番組をきっかけに、風向きが少し変わりました。
「テレビでやっていたんだけど、熱中症ってこわいのねぇ」
「そうなんです! ひっくり返って救急車ですよ。だから、おかあさん、エアコンを……!」
「あなたってホント心配性ねえ。オホホ」
笑いごとじゃないよ! と言いたくなるのをグッと飲み込み、苦笑い。でも、義母も思うところがあったのか、このやりとりを境に、文句が激減。ヘルパーさんたちが根気強く対応してくださったおかげもあって、室温・湿度を一定にキープする体制を整えることができたのです。