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認知症でデイサービスに通う義父の暴言が止まらない 専門家が助言

高齢者のイメージ

見守り支援を行う梅澤宗一郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の義父はデイサービスに通っていますが、ほかの通所者の方に対して暴言を吐くなどトラブルメーカーになっています。私も働いていて、日中デイサービスに行ってもらわないと困るのですが、暴言をどうにかやめさせる方法はないでしょうか(53歳・女性)

A.よくそのようなトラブルは相談されますが、多くの場合は暴言ではなく、本人の不安や不満そして抵抗から出てくる表現だと思っています。お義父さんにもまだまだ力が残っている証拠ですね。「大きな声を出す」「物を叩く」「怒り出す」と表現はさまざまです。
とは言え、ご家族としては困った悩みですね。私の経験では多くの場合、そのような表現は改善します。完全になくならなかったとしても、良い状況でいる時間を長くすることはできることが多いです。『暴言=問題行動』ではなく、ご本人からのサインなのです。

まずはデイサービスのスタッフやケアマネジャーとご家族が原因について話し合ってほしいですね。現在の自宅での様子や皆さんから見えているお義父さんの姿も大切ですが、「職業・経歴・仕事での立場・お父さんとしての若いころの姿」など、家族にしかわからないことは、スタッフに伝えておきましょう。それが原因を見つけ出すヒントになることもあるんです。例えば、働いているときに、指導者的な立場にいた方だとしたら、厳しい目で周りを見てしまい、苛立ち言動に現れてしまうこともあります。今までの経験から敏感に反応して不安や不満が出てしまうことがあるのです。

また、夜間に十分に睡眠がとれていなかったとしたら、昼間は眠くてもうろうとしているかもしれません。その状態で無理にデイサービスに連れていかれたらどうでしょうか。現在の生活環境の改善がそのような言動も改善させることはよくあることです。

原因がわかった上でその原因をとり除く対処をするのが理想ですが、それでも落ち着かない場合には別のデイサービスに変えてみるのも一つの方法ですね。大規模な施設から小規模な施設に移るなど、単純に環境が変わっただけで、言動が落ち着くケースもあります。

家にお義父さんを一人でおいておくのは不安というお気持ちはよくわかります。でもお義父さんにとってはデイサービスに行くこと自体が不安なのかもしれません。ご相談者は「働いているのでデイサービスに行ってもらわないと困る」とのことですが、ここは自分自身ではなくお父さんの不安を取り除くことを優先して、訪問介護などを利用して自宅にいてもらうことも選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

暴言を吐くということは、ご本人もつらい思いをしているはずなんです。つらい思いに寄り添い、ご本人のサインを見逃さないことが、心の安定につながると思います。

〈つぎの質問を読む〉認知症の実母を自宅介護したいが夫が反対…どう説得すれば?

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