認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

夫婦で対立 自宅で介護したい私 施設に入れたい夫 専門家が回答

介護のイメージ

介護施設を運営し、見守り支援を行う梅澤宗一郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の初期と診断された実母を自宅で介護したいのですが、夫が「徘徊でもされたら」という理由で反対し、施設を探すように言われています。夫をどのように説得すればいいでしょうか。(45歳・女性)

A. このお悩みでまず私が気になるのは、当事者であるお母さんのお気持ちはどうなんだろうなってこと。“認知症あるある”なんですが、認知症と診断された瞬間から、周りはご本人を特別扱いしてしまうんですね。何もわからなくなる人みたいな存在にしてしまう。認知症の人にも考えや思いはあるので、お母さんにも確認してほしいなと思います。改まって聞くというよりも、家族なので普段通りの会話の中で自分の思いを伝えつつ、軽い感じで聞くのがいいですね。

気を付けなければいけないのは、誰でもそうですが、思いは今日と明日で変わることもあれば、誰にどんな状況で聞かれたのかによっても、変わることがあるということ。1回の答えだけで話を進めるのではなく、日常の中で繰り返し聞いて、お母さんの思いをくみとってあげられるといいですね。

そして思いが変わるというのは、ご相談者も夫も同じ。夫を説得するというより、まず夫の気持ちをよく聞くことから始めませんか? 介護に対するイメージが夫婦で違うのは当然です。もしかしたら夫は子供のころに認知症の祖父母を自宅で介護し、苦労している家族の姿をみていた経験があるのかもしれない。だからこそ、介護を担う妻のことを心配しているのかもしれない。

判断するための材料を夫に

自宅で介護するといっても、今は訪問介護やデイサービス、ショートステイなどさまざまなサービスを受けられます。こうした情報や施設のメリット、デメリットなど、自宅で介護する場合と施設に入所する場合を比較して冷静に判断するための材料も夫には必要だと思います。こうした情報は妻から伝えるのではなく、できればケアマネジャーなど第三者から話してもらうほうが、冷静な判断につながりやすいでしょう。時間があれば、地域の家族会などにもぜひ参加してほしいと思います。同じ立場の経験者に話を聞けると理想的ですね。

夫婦で気持ちを共有し、お母さんも含めて誰もが納得する形で介護を進めていけるといいですね。介護をしていく中で家族の状況や気持ちが変わることはよくあります。大切なのは継続的に話し合いながら介護を進めていくこと。支え方は、途中でいくらでも変えられるというくらいの気持ちでいることが大切です。

〈つぎの質問を読む〉認知症の夫と離婚できますか?

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア